温室効果(読み)オンシツコウカ(その他表記)greenhouse effect

デジタル大辞泉 「温室効果」の意味・読み・例文・類語

おんしつ‐こうか〔ヲンシツカウクワ〕【温室効果】

太陽光に暖められた地表が放出する赤外線二酸化炭素などの温室効果ガスが吸収するため、地表が温室のように保温される現象。二酸化炭素などの濃度が増大すると、地球全体の気温の上昇が予想される。→地球温暖化

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精選版 日本国語大辞典 「温室効果」の意味・読み・例文・類語

おんしつ‐こうかヲンシツカウクヮ【温室効果】

  1. 〘 名詞 〙 大気中の二酸化炭素や水蒸気などによる保温効果。大気中の二酸化炭素は、温室のガラスのように、太陽光は透過させるが、地表からの赤外線は吸収して地表の気温を上昇させるところからいう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「温室効果」の意味・わかりやすい解説

温室効果
おんしつこうか
greenhouse effect

惑星大気の存在によって、その表面が保温される場合の効果をいう。すなわち、大気自身は太陽からの可視部の短波放射に対しては透明であり、大気を通り抜けたこの放射は地表に吸収される。これに対して、地表から放出される長波放射(赤外線)の一部は大気に吸収され、その大気自身も長波を放出し、この放出されたものの一部は地表に戻ってくる。大気にはこのような働きがあるため、地表の平均気温はおよそ15℃になっているが、これは大気がまったくないときに比べると33℃も高い気温である。このような働きを温室のガラスに例えた場合、ガラスは光線を通すが、内部の熱を逃がさないために保温効果があるということと似ているので、この現象を温室効果という。

 大気中の成分でもっとも温室効果の大きいのは水蒸気と二酸化炭素である。化石燃料の消費や農耕地の拡大などが原因で二酸化炭素は年を追って増大しつつあり、そのための温室効果によって地球全体の気温上昇が観測されている。IPCC気候変動に関する政府間パネル)第四次評価報告書(2007)によると、今後約100年の間に気温が上昇する範囲は1.8~4.0℃と予想されている。人間が大気という自然に与えている影響として、二酸化炭素の増加による温室効果の増大は無視できない問題となってきている。そのため温室効果をもたらす二酸化炭素の排出量削減に関する問題が、1992年に「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)で討議され、気候変動枠組み条約(気候変動に関する国際連合枠組み条約)が成立した。1997年には京都で、地球温暖化防止京都会議が開催され、地球温暖化防止対策と措置を定めた京都議定書が採択された。しかしその後も、温室効果の増大は、懸案の重要問題であり、さらに効果的な地球温暖化対策のための国際的枠組み合意に向けて国際交渉が進められている。

[根本順吉・青木 孝]

『生田豊朗ほか著『温室効果ガスと地球温暖化――影響と対策、展望』(1989・アグネ承風社)』『A・ブディコほか著、内嶋善兵衛訳『地球大気の歴史――その進化と未来を探る』(1989・朝倉書店)』『ジョン・グリビン著、加藤珪訳『オゾン層が消えた』(1989・地人書館)』『根本順吉著『熱くなる地球――温暖化が意味する異常気象の不安』(1989・ネスコ)』『気象庁編『温室効果気体の増加に伴う気候変化2』(1990・大蔵省印刷局)』『霞が関地球温暖化問題研究会編訳『IPCC地球温暖化レポート――「気候変動に関する政府間パネル」報告書サマリー』(1991・中央法規出版)』『ジョン・グリビン著、山越幸江訳『地球が熱くなる――人為的温室効果の脅威』(1992・地人書館)』『慶応義塾大学理工学部エネルギー・環境研究グループ編『二酸化炭素問題を考える――問題の実態と対策に関する諸見解をめぐって』(1994・日本工業新聞社)』『地球環境と大気汚染を考える全国市民会議編『しのびよる地球温暖化』(1996・かもがわ出版)』『環境庁地球環境部編『京都議定書と私たちの挑戦――「気候変動に関する国際連合枠組条約」に基づく第2回日本報告書』(1998・大蔵省印刷局)』『ジョン・ベイン著、高野尚好日本語版監修『大気と地球温暖化』(1999・小峰書店)』『安成哲三ほか編、中沢高清ほか著『岩波講座 地球環境学3 大気環境の変化』(1999・岩波書店)』『住明正著『地球温暖化の真実』(1999・ウェッジ)』『水谷洋一著『2010年地球温暖化防止シナリオ』(2000・実教出版)』『西岡秀三編、環境省地球環境局『温室効果ガス削減技術――京都議定書の目標達成のために』(2001・エネルギーフォーラム)』『気候ネットワーク編『よくわかる地球温暖化問題』(2002・中央法規出版)』『伊藤公紀著『地球温暖化――埋まってきたジグソーパズル』(2003・日本評論社)』『原沢英夫・西岡秀三編著『地球温暖化と日本――自然・人への影響予測 第3次報告』(2003・古今書院)』『近藤洋輝著『地球温暖化予測がわかる本』(2003・成山堂書店)』『気象庁編『地球温暖化予測情報第5巻』(2003・気象業務支援センター)』『住明正著『エルニーニョと地球温暖化』(2003・オーム社)』『住明正著『さらに進む地球温暖化』(2007・ウェッジ)』『江守正多著『地球温暖化の予測は「正しい」か?』(2008・化学同人)』『小西雅子著『地球温暖化の最前線』(2009・岩波書店)』『IPCC編、文部科学省・経済産業省・気象庁・環境省訳『IPCC地球温暖化第四次レポート――気候変動2007』(2009・中央法規)』『根本順吉著『超異常気象――30年の記録から』(中公新書)』『浅井冨雄著『異常気象はこう進む』(小学館文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「温室効果」の意味・わかりやすい解説

温室効果
おんしつこうか
greenhouse effect

太陽からの短波放射は,比較的容易に大気中を通過して地表面に吸収されるが,地表面から射出される長波放射は,大気中の水蒸気二酸化炭素オゾンに吸収されて大気圏外に逸散しにくい。すなわち,大気が温室のガラスのような効果をもつことから,このような効果を温室効果という。温室効果を引き起こす気体を,温室効果ガスと呼ぶ。地球表面の平均気温は絶対温度 288K(約 15℃)であるが,大気がなかった場合は 255K(約-18℃)であるから,大気による温室効果は約 33℃ということになる。ほかの惑星をみると,金星の大気には地球よりも二酸化炭素が高濃度で含まれている。そのため温室効果が大きく,惑星からの熱が宇宙に逃げるのを防ぐため,金星の表面温度は 450℃にもなる。一方,火星の大気は二酸化炭素の濃度が低く,惑星から多くの熱が宇宙へ放射する。つまり,火星では温室効果が小さく,表面は冷たくなる。火星の平均表面温度は-63℃ほどである。

地球の大気中で自然を起源とした最も影響の大きい温室効果ガスは水蒸気である。空気中の水蒸気の量,つまり湿度は,地球の場所ごとに異なっている。たとえば,寒い気候の地域では湿度は低くなり,熱帯気候の地域では湿度が高くなる。水蒸気は上空で雲を形成することでも,地球の気候に影響を与える。雲は太陽光を反射して地球を冷却するだけでなく,地球からの熱を閉じ込めて地表近くの空気を温める。ほかに自然界での温室効果ガスの放出には次のようなものがある。二酸化炭素は,火山が噴火したり,有機物が分解されたり,生物が息を吐いたりするときに放出される。メタンは,沼地などの低酸素環境で生物学的過程によって生成および放出される。一酸化二窒素は,海や土壌内の細菌から放出される。温室効果ガスの自然界での放出は,通常,これらのガスを吸収するほかの自然作用とバランスがとれている。たとえば,植物は呼吸で二酸化炭素を放出するとともに,光合成の過程で二酸化炭素を吸収している。ガスを放出・吸収する一連の過程は炭素循環と呼ばれる。

人為的な温室効果ガス放出の約 4分の3は,石炭,石油,天然ガスなどの化石燃料の燃焼から発生している。温室効果ガスの濃度は,大気が保持する熱量に影響する。自然起源の温室効果は地球上での生命活動に必須だが,人間の活動による温室効果の増大は,炭素循環の均衡を崩し,地球温暖化を引き起こす。

1827年にフランスの数学者ジョゼフ・フーリエが,地球の大気が温室のように熱を閉じ込めていることを最初に発見した。約 70年後の 1896年,スウェーデンの化学者で物理学者のスバンテ・アレニウスが,産業革命で化石燃料の大規模な燃焼が始まって以来,二酸化炭素が大気中に蓄積され,それによって地球の平均気温が上昇したという説を最初に提唱した。アレニウスは,産業の成長が続くにつれ,二酸化炭素濃度が上昇し続け,さらに地球の平均気温の上昇を引き起こすと仮説を立てた。のちに証明されたが,科学者がアレニウスの説を証明するデータを収集するまでには,約 50年の時間を要した。

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百科事典マイペディア 「温室効果」の意味・わかりやすい解説

温室効果【おんしつこうか】

太陽放射は大気にあまり吸収されずに地表面に達するが,地表面からの長波長放射(赤外放射)は大気中の水蒸気,二酸化炭素により吸収される。大気のこのような作用は大気や地表面の放射冷却を和らげる効果があり,温室のガラスの作用に相当するため,温室効果と呼ばれる。大気の温室効果のため,地表面温度は約33℃昇温。大量に使用される化石燃料のため大気中の二酸化炭素の量が増加し,温室効果が増大して地球の平均気温が上昇する傾向(地球温暖化)にある。砂漠の増大や海面上昇などの可能性があり,対策が国連環境会議で検討されている。なお,二酸化炭素,水蒸気のほか温室効果をもつメタン,一酸化二窒素,フロン,オゾンなどを含めて温室効果気体という。
→関連項目温室効果ガス省エネルギー大気汚染地球温暖化

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改訂新版 世界大百科事典 「温室効果」の意味・わかりやすい解説

温室効果 (おんしつこうか)
greenhouse effect

大気中の水蒸気や二酸化炭素などが放出する赤外放射によって,下層大気が温められる効果。温室のガラスは風を防ぐ以外に日射を素通りさせるが,温室内から放出される赤外放射を吸収して,温室内を温める。同様に,大気中の二酸化炭素などは日射を素通りさせるが,地表からの赤外放射を吸収する。吸収された放射の大部分は地球に向かって放射され,下層大気を温める。この効果は温室の機能に似ているので温室効果という。
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化学辞典 第2版 「温室効果」の解説

温室効果
オンシツコウカ
greenhouse effect

大気中の水蒸気や二酸化炭素などには,可視光線は通過するが赤外線の一部を吸収する性質がある.紫外線や可視光線を含む太陽光は地表面で吸収され,加熱された地表面から宇宙空間に放出される赤外線の一部がこれらのガスによって吸収され,地表に向かってふたたび放出される.このため,二酸化炭素などの大気中の濃度が増加すると,地球から放出されるエネルギーのうち大気にとらえられる割合が増加して,地球全体の平均気温を上昇させることになる.このような現象を温室効果とよび,二酸化炭素,メタン,亜酸化窒素などの温室効果を生じさせる気体を温室効果ガスという.化石燃料の大量消費による大気中の温室効果ガスの増加が,地球温暖化の有力な原因である.

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法則の辞典 「温室効果」の解説

温室効果【greenhouse effect】

地球大気は,可視光線や近紫外線はかなりよく透過させるが,赤外線部分に当たる地球表面からの長波長輻射は,水蒸気や二酸化炭素などに吸収されるため透過されにくい.そのために地表付近の大気はあたかも温室中にあるかのように暖められる.金星の大気はもっと温室効果が激しいので,地表は著しい高温となっている.地球でも温室効果ガスの増大が温暖化につながるとして国際的な政治・環境問題に発展するまでになった.

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知恵蔵 「温室効果」の解説

温室効果

大気中に放出された二酸化炭素などの微量な気体は太陽から届く日射は通すが、日射を受けて温度が上昇した地球が放射する赤外線を吸収するため、それらの気体が地球を温室のように暖めること。温室効果をもたらす気体(温室効果ガス)には水蒸気、二酸化炭素、メタン、ハロカーボン類(フロン、ハロン類)、一酸化二窒素、六フッ化硫黄、オゾンなどがある。

(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内の温室効果の言及

【大気放射】より

… 大気中の気体は日射を素通りさせるが,二酸化炭素,水蒸気などの気体や雲は地表からの赤外放射を吸収し,その大部分を地表に戻し,大気をあたためる。日射は通すが赤外線を吸収して室内をあたためる温室のガラスに似ているので,この効果を温室効果という。
[大気中の熱収支]
 大気は日射をわずか吸収するだけで,放出する赤外放射のほうが多い。…

【熱汚染】より

…人類の生活空間が拡大し,自然の山野が開かれ海や河川が埋め立てられ,都市が発展してコンクリートやアスファルトで地表面がおおわれることによる気候の変化は,ヒートアイランドを出現させたり,蒸発散率を著しく変え,砂漠化現象や異常気象の原因をつくる。また,大気汚染物質,とくに炭酸ガスの増加は,地表面から大気中への放熱を妨げ,気温を上昇させることになる(温室効果)。都心部の密集住居群にあっては,風通しの悪さに加えてコンクリートやアスファルトなどの熱容量の大きな人工構築物が夜間の冷却を妨げ,熱が何日も累積した地表面では露点温度以上の日が続き,地中温度をも異常な高温状態にして地中の生物を死滅させる。…

※「温室効果」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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