改訂新版 世界大百科事典 「ライギョ」の意味・わかりやすい解説
ライギョ (雷魚)
スズキ目タイワンドジョウ科の淡水魚であるタイワンドジョウとカムルチーを区別せずにライギョと俗称する。いずれも一見ヘビのような頭部をもち体色も似るが,体側の斑紋がタイワンドジョウでは3列,カムルチーでは2列である。英語でもこの仲間をsnake headと呼ぶ。
タイワンドジョウChanna maculataの原産地は中国南部,ベトナム,フィリピンなどで,台湾ではライヒーと呼ばれる。日本には明治末~大正初めに移入され,兵庫,大阪,京都など限られた範囲に見られる。全長60cm。カムルチーC.argusは揚子江からアムール川に至る大陸東部一帯に分布し,この名は朝鮮語に由来する。日本への渡来は大正末ころとされ,現在では北海道を除く全国各地に広く繁殖している。全長85cm。
ライギョは流れがゆるく水草の茂った場所を好み,ここに潜んで小魚,エビ,カエルなどを狙う。獲物が近づくと突進してくわえ,そのまま後戻りする。産卵期は6~7月,水草を集めて径1mほどの水面を囲い,その中に浮遊卵を産む。雌雄の親魚は孵化(ふか)した仔魚(しぎよ)が泳ぎだすまで巣の下で番をする。鰓腔(さいこう)の上部に粘膜でおおわれたひだをもち,ここで空気呼吸をする。そのため,ときどき水面に出て空気を吸い,水からとり上げられても長時間生きられるが,逆に水中のかごに閉じ込められると死んでしまう。肉は白く美味であるが,有棘顎口虫(ゆうきよくがつこうちゆう)の中間宿主なので生食は危険。近年ルアー釣りの対象として人気がある。この仲間は東南アジアでは重要な食用魚となっている。
執筆者:羽生 功
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報