ミカン科の常緑果樹。果実の酸味と芳香はレモンに似るが,果形はいくぶん丸くて小さい。レモンに比べ低木。枝のとげは大きいが枝は細く,葉も小さい。耐寒性も弱い。四季咲性の花は総状花序で,白色5弁。果皮色はレモンに似る。多汁で酸濃度は約7%あるが,無酸種は0.1%程度。種子は小型で多胚性。タヒチライムと呼ばれる品種は種子がなく,三倍体といわれる。熱帯,亜熱帯に広く栽培される。インド東北部あるいはマレーシア地域原産で,アラブ諸国,北アフリカを経てヨーロッパ南部に伝えられ,さらにカリブ海の島々と新大陸に伝播(でんぱ)した。主産国はインド,メキシコ,エジプト,アメリカ(フロリダ州)。20世紀前半に台湾を経由して日本に導入されたが,寒さのため栽培できなかった。近年数種のライム類が再導入され,タヒチライムのハウス栽培が試みられている。
酸果ライム(サワーライム)sour limeと無酸ライム(スイートライム)sweet limeに大別されるが,普通は前者をライムという。酸果ライムは小果種と大果種に分けられる。小果種はメキシカンライムが代表品種。同種はカリブ海の島で野生化し,そこの地名からWest Indian lime,Key(Florida Keys)limeともいう。大果種はタヒチライムが代表品種。同種は1824年ブラジルからオーストラリアにPersian limeとして伝播。19世紀後半タヒチ島からカリフォルニアへ伝播。シトロンまたはレモンと類縁で地中海沿岸地域原産と考えられている。ライムジュースは,ジンライムなどのカクテルに使われる。砂糖水を加えてライムエード,炭酸飲料,料理のつまなどレモンと似た利用法がある。東南アジアでは果汁を調味料,ピクルスに用いる。香料としてライムオイルも作られる。メキシカンライムはかんきつトリステザウイルス病の検定植物に利用される。スイートライムはインド,エジプトなどで食用とされるほか,かんきつ類の台木に使われる。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑低木または小高木。高さ約2メートルで叢生(そうせい)する。枝条は繊細で多数あり、刺(とげ)がある。葉は小さく、小さな翼葉がある。花は小さく白色で単生または総生し、四季を通じて開花する。果実は縦径約4.5センチメートル、横径約4センチメートル、小さな乳頭突起がある。熟果は黄緑色、果皮は薄く剥皮(はくひ)は困難である。収穫は黄熟前の緑色のうちに行う。
肉質は柔軟多汁で、酸は強く香気があり、レモン同様に用いられる。デリケートな酸味は柑橘(かんきつ)類中随一である。紅茶、野菜、果物のサラダ、フライ、焼き肉、焼き魚などにとくにあい、またテキーラを飲みながら汁をすするのでも有名である。ライムオイル、クエン酸の原料にもなる。マレーからインドにかけて原産し、熱帯圏に広く伝わった。インド、スリランカ、地中海諸国、メキシコなどで栽培が多い。
いくつかの変種や近縁種が知られているが、トゲナシライムは、ライムの突然変異によってできたものである。変種のタヒチライムvar. latifolia Tanakaは果実、葉ともに大きい。近縁のスイートライムC. limettioides Tanakaはインド原産で酸味がなく甘い。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]
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