翻訳|latex
ゴムの微粒子が水中に分散し,コロイド状の安定な懸濁液となっているもの。天然ゴムラテックスと合成ゴムラテックスがある。ゴムノキの樹皮にナイフで溝状の切込みをつけると牛乳状の液が流れ出るが,これが天然ゴムラテックスである(ゴム)。合成ゴムの多くは乳化重合法で製造されるが,重合終了後,反応液から未反応モノマーを取り除くと合成ゴムラテックスが得られる。ラテックスに凝固剤を加えてゴム分を凝固,分離,乾燥させて固形ゴムを得る。ラテックスは種類によって固形分の含有率も異なるが,天然ゴムラテックスを例にとると,水100に対しておよそ60~70重量部という大量の固形分を含みながら水のようにさらさらと流れる特徴をもっている。ラテックスはその特徴を利用して各種用途に用いられるが,その基本は,安定なコロイドゾルである配合ラテックス(配合剤を添加したラテックス)が成形加工の工程でゲル化することにより賦形され,次いで乾燥,加硫を経て製品となることである。ラテックスにおける加硫も,その原理は固形ゴムの場合と同様で,加硫に先立って各種配合剤が加えられる。
ラテックスの用途は浸漬製品,キャスト製品,ペーパーコーティング用,カーペットバッキング用,建材,フォームラバーなど多方面にわたっている。浸漬製品は型をラテックスに浸漬したのち引き上げて,型の表面に均一な厚さのゴム薄層を形成させ,次いで乾燥,加硫させたのち型から取り外して製品とするもので,家庭用・手術用ゴム手袋,コンドーム,指サック,哺乳瓶用乳首などがこの方法で製造される。キャスト製品は内側に希望する形をもった型を用い,その内面にラテックスを付着させる方法でつくられる。あらかじめ加熱しておいた型の中へラテックスを満たし,所期の厚さにゴムを型内壁へ沈着させたのち,あまったラテックスを取り除く。次いで成形品を型から取り出したのち加熱することにより加硫し,製品とする。ゴム人形などゴム製玩具類がこの方法で製造される。ゴム糸はラテックスをノズルから凝固浴中に押し出し,紡糸したのち加熱して加硫することによって製造される。ペーパーコーティング用ラテックスは,紙にクレー,炭酸カルシウム,タルク,酸化チタンなどの顔料を塗布して高級紙を製造する際,これらのバインダーとしてカゼイン,デンプンなどと混合して使用されるもので,合成ゴムラテックスの最大の用途である。カーペットパッキング用ラテックスはカーペットの裏に塗布することにより,パイルと基布の接着を行うとともにカーペットの寸法変化を少なくしたり,床面とのすべり防止などにも役立っている。このほか,不織布のバインダー,セメントの性能を向上させるためのセメント配合用,また,アスファルトの耐摩耗性などの性能向上のためのアスファルト配合用など,多方面に利用されている。
執筆者:住江 太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
天然または合成ゴム,またはプラスチックの水乳濁液をいう.合成ラテックスは乳化重合法でつくられる.紙や織物の処理剤,擬似皮革,泡ゴム,浸漬成形品,エマルション材料,接着剤などに使われている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…その苗木がマレーシア地方に移植され,これが現在の栽培ゴムノキの母体となった。 天然ゴムはゴムノキの分泌するラテックスと称する乳液中に含まれる炭化水素である。ラテックスを分泌する植物は数が多く,220種以上もあるとされ,産地はおもに赤道をはさみ緯度20゜以内の高温多湿な地域である。…
※「ラテックス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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