改訂新版 世界大百科事典 「ランドレース種」の意味・わかりやすい解説
ランドレース[種]
Landrace
加工用型のブタの品種。ランドレースという単語は本来,在来種を意味する普通名詞であったが,20世紀の半ばにはじめてデンマークで本種がつくられて以来,固有品種名としても使われるようになった。デンマークの本種を基礎にして,世界の各国でイギリス系,オランダ系,アメリカ系,ノルウェー系など,それぞれの国独自のランドレース種が成立している。デンマークでは19世紀の半ばまで,体積の豊かな生肉用型のブタを飼い肥育してドイツへ輸出していた。1887年にドイツが豚肉の輸入を禁止したため,デンマークは輸出先をイギリスに変更したが,これに伴い加工用の屠体(とたい)生産に改良方針を切り替えざるを得なくなった。そのため在来豚に大ヨークシャー種を交配し加工用型のブタを作るとともに,国内に産肉能力検定所を設置して,後代検定により種畜を選抜し,改良を重ねて成立した品種である。
皮膚被毛は白色。体軀(たいく)は大型で,頭部は比較的小さく,顔のしゃくれは少ない。耳は大きくて前方に垂れて,顔を覆っている。胴の伸びがきわめてよく,背線は弓状で,後軀が発達し腿の充実も良好である。体重は雄で330kgぐらい,雌は270kgぐらい。発育が早く90kgの屠殺体重に達するのが約180日齢,繁殖力も優れている。屠体は長く,斉一で,脂肪と赤肉の割合も適度であり,世界各国での評価が高い。日本には1960年に初めて輸入され,その後急速に飼養頭数が増え,現在純粋種としては第1位の座を占めている。
→ブタ
執筆者:正田 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報