後代検定(読み)コウダイケンテイ(英語表記)progeny test

デジタル大辞泉 「後代検定」の意味・読み・例文・類語

こうだい‐けんてい【後代検定】

農作物の草たけや収量、また、家畜体重など量的な遺伝的性質後代にも現れるかどうか、次代を育成して検査する方法

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「後代検定」の意味・わかりやすい解説

後代検定 (こうだいけんてい)
progeny test

品種改良(育種)の操作の中で,個体の遺伝的特性を調べる検定技術の一つ。生物の外観変異には,遺伝質の変異による部分と,環境の影響による部分とが含まれている。とくに環境の影響が大きいときには,選抜した後代で検定をして再吟味し,その段階で慎重に環境変異の影響を取り除き,遺伝変異を確かめる必要がある。育種の第1段階で,雑多な集団の中から個体選抜をする純系選抜育種法では,とくに後代で系統栽培し,後代検定をする必要がある。またどのような育種法でも,大部分の形質(収量とか熟期とか,丈の長さとかいう生物の示す特徴)について,数世代にわたって吟味することが多い。他殖性植物の育種ではとくに,後代検定を特殊な形で計画的にとり入れることがある。たとえばテンサイなどの一代雑種育種法では,交配してから次の世代の種子をたえず採種し,農家に配布する必要がある。そこで長期展望にたって育種をすすめるために,採種した株ごとの根の生産力を後代検定し,良い株を選ぶ。優良株どうしの交配でまた同じ作業を繰り返すが,その間たえず農家にはできるかぎり新しい種子を配布する。実際にこのような方法がヨーロッパで採用され,1860年ごろから50年間に根の中の糖分が10%近くから16%にまで高まった。こうしてテンサイから砂糖を作る大規模な工業化が可能となった。
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子の平均的な成績を調べて親の遺伝的な資質を評価しようとする能力検定の方法をいう。普通雄についての選抜に用いられることが多いが,これは雄の方が子の数が多く次の世代に及ぼす影響が大きいことと,泌乳能力や産卵能力など雄では表に現れない形質についての選抜はこの方法によらなければならないことの二つの理由からである。後代検定の正確度は,検定を受ける子の数や子のさらされる環境に偏りがあるかどうかなどによって大きく左右される。子の数は多いほど正確度は増すが,選抜に必要な時間が長くなり世代間隔が増して改良をおくらせることになる。乳牛の後代検定法としては子の成績を母の成績と比較して判定する母娘比較法と,同期の他子畜群と比較評価する同期比較法とがある。母娘比較法には遺伝方眼法と種雄指数法があり,遺伝方眼法は方眼紙の上に母の成績を横軸に娘の成績を縦軸にとって点を打ち,その分布によって雄の能力を推定する方法である。種雄指数法は娘の成績(D)と母の成績(M)の値から指数(S)を算出し優劣の評価をするもので,代表的なハンソン=ヤップ(Hansson & Yapp)の式はS=2DMで表される。同期比較法というのは環境の差による誤差を取り除くために考えられたもので,雄の種畜価を決めるのに同じ群の中の同じ時期に検定を受けた他の雄畜の子の成績と比較するもので,群や年次の違いによる環境の影響を避けることができる。また肉用家畜の肉質のように屠殺(とさつ)しなければ判定できない形質の選抜育種も後代検定によらねばならないので,ブタの育種にも組織的に応用されている。一般に後代検定の実施方式には一定の検定場に集めて行う集合検定と,飼育者の飼養現場で行う現場検定とがある。正確さの点では前者が優れているが,経費を要し検定実施頭数が制限されるので,後者の方式で多数の子畜の検定を行って正確さを補う場合が多い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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