リカレント教育(読み)リカレントきょういく(英語表記)recurrent education

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

リカレント教育
リカレントきょういく
recurrent education

義務教育または基礎教育の修了後,生涯にわたって教育と他の諸活動(労働,余暇など)を交互に行なう教育システム。スウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンの提唱した概念で,1970年経済協力開発機構 OECDの教育政策会議で取り上げられ,研究が進められている。スウェーデンやフランスの有給教育制度アメリカ合衆国コミュニティ・スクール,日本の夜間制社会人大学院,放送大学などがその例である。青少年の社会参加を早め,過重な教育負担や教育内容の世代間較差を解消するなどの効果が期待される。しかし,生涯のどの段階にどのような教育を配置するか,労働などを中断して教育に参加する条件をどう確保するか,教育経費の増大にどう対応するかなど,具体化への課題は多い。

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知恵蔵の解説

リカレント教育

社会人になってからも、学校などの教育機関に戻り、学習し、また社会へ出ていくということを生涯続けることができる教育システムを指す。リカレント(recurrent)には、繰り返しや循環といった意味があり、回帰教育、循環教育と訳されることもある。また、「学び直し」と表現されることもある。
 リカレント教育は、スウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンが提唱し、1970年代には、経済協力開発機構(OECD)が推進する生涯教育の一形態となった。日本でも、大学の社会人入学制度や科目履修生制度が設置されたり、リカレント教育を促進するための専門職大学院やサテライトキャンパスなどが開講されたりしているが、OECDが2012年に実施した「国際成人力調査」によると、30歳以上の成人の通学率は、参加24カ国中、最も高いフィンランドの8.27%と比べ、日本はその約1/5の1.6%と最も低く、リカレント教育が進んでいないことが明らかとなっている。なお、文部科学省が公開している2015年4月に公開された「社会人の学び直しに関する現状等」の資料によれば、社会人の意識調査においては、89%の人が、再教育を「受けたい」又は「興味がある」と回答しているのだが、「勤務時間が長くて十分な時間がない」、「費用が高すぎる」、「職場の理解を得られない」などの理由で、実際にはリカレント教育を受けられていないという現実がある。
 今後、急速な少子化高齢化により、労働力人口の減少が懸念される日本では、同時に、健康寿命が延び、100歳まで生きることが普通になる「人生100年時代」がやってくると言われている。17年9月より、首相官邸において、「人生100年時代構想会議」が開催されており、すべての人に開かれた教育機会を確保し、何歳になっても学び直しができるリカレント教育について議論されている。今後、政府は、経済的な事情などで、高校や大学へ進学できなかった人や、出産、育児で退職した女性、または定年退職した高齢者などが、リカレント教育によって「いつでも学び直し・やり直しができる社会」を目指し、文部科学省は、18年度の予算において、リカレント教育や職業教育の充実に取り組む大学および専修学校等への支援にあてる予算を増額するなど、具体的な対応を進めている。

(横田一輝 ICTディレクター/ 2018年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

リカレント教育

社会に出てからも学校などで学び、生涯にわたって学習を続ける教育の形。経済協力開発機構(OECD)が1970年代に提唱し、普及した。「リカレント」は「還流」「回帰」などの意味がある。

(2017-10-01 朝日新聞 朝刊 2社会)

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デジタル大辞泉の解説

リカレント‐きょういく〔‐ケウイク〕【リカレント教育】

《リカレント(recurrent)は、反復・循環・回帰の意》経済協力開発機構(OECD)が提唱する生涯教育構想。社会人が必要に応じて学校へ戻って再教育を受ける、循環・反復型の教育体制。

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ナビゲート ビジネス基本用語集の解説

リカレント教育

リカレントとは「回帰する、循環する」という意味。OECD(経済協力開発機構)が推進する生涯学習構想の1つ。従来のように学校→社会(就労)という方向だけでなく、社会(就労)→学校という方向での学習を推進することで、生涯にわたって教育機会を分散するしくみをいう。 高等学校や大学における社会人への門戸開放も、リカレント教育の一環ととらえられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

リカレント教育
りかれんときょういく
recurrent education

広義には社会人が人生の途上でさまざまな形で学ぶことを意味するが、狭義には高等教育機関など整った教育機関で教育を受けることを意味する。「回帰教育」とか「還流教育」と訳されることもある。リカレント教育の考えは、スウェーデンで1968年に高等教育制度審議のために設置された教育審議会(U68と略称)の第二次報告「高等教育―機能と構造」で示された。翌年の第6回ヨーロッパ文相会議で、スウェーデンの文相からこれについての報告があり、その後OECD(経済協力開発機構)がこの理念に基づく教育のあり方について提唱することになった。職業―教育―職業といったサイクルを確立することは、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の提唱した生涯教育を具体化するものとしてとらえられる。
 スウェーデンでは、1977年の高等教育改革で、25歳以上で、4年以上の職業経験(育児を含む)をもつ者を高等教育機関に受け入れる特別な選抜方法を採用し、一時は大学生の半数が成人学生であった。そこには、教育機会の均等化とともに、産業構造の変化・技術革新への対応ということがあった。しかしこの制度は、若者の高等教育への受入れ枠を狭めるとする批判もあって、成人入学枠を縮小することも行われた。多くの国でパートタイムの学生を増やしたり、単位の累積を認めて職場と学校を行き来できる仕組みを整えたりしている。イギリスでも、1971年に、資格を問うことなく成人を入学させ、放送などを通じて教育を行う公開大学Open Universityが発足し、アメリカでは、コミュニティ・カレッジが、開かれた教育機関として希望者に多様な種類の教育を提供している。
 日本でも、第二次世界大戦後、大学や高等学校で通信教育が行われてきたが、新たに放送大学が設置されて、1985年(昭和60)以来、成人学生を受け入れるほか、多くの大学が社会人入学の制度をとるようになっている。単位の累積による学位取得も可能な科目等履修生の制度の採用も広がっている。自治体、高等教育機関、企業等でリカレント教育協議会を構成し、リカレント教育講座の充実に努めるところも増えている。職業技術教育を中心とした専修学校も、リカレント教育の機能を果たしている。
 多くの国では、いわゆる終身雇用制でないため、教育機関での職業技術についてのリカレント教育が必要とされる度合いが高い。その点、日本では職業技術は企業内教育によるところが大きかったが、派遣社員の増加にみられるように、従来の雇用形態が揺らぎ始めており、リカレント教育機関の整備の必要性が増しつつある。[上杉孝實]
『佐々木正治・諸岡和房編『世界の生涯教育』(1991・亜紀書房)』

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図書館情報学用語辞典の解説

リカレント教育

職業人を中心とした社会人が高度で専門的な知識や技術を習得するために,必要に応じて受けられる再教育システム.リカレント(回帰・循環)という語が示すように,生涯にわたって教育を継続的に循環させようというものである.1970年,経済協力開発機構が成人教育の具体化戦略として提唱.図書館関係では,日本図書館協会専門図書館協議会などが実施する各種研修会,筑波大学慶應義塾大学の図書館情報学専門課程での社会人大学院生の受入が一例である.

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