ル・ゴフ(その他表記)Le Goff, Jacques Louis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ル・ゴフ」の意味・わかりやすい解説

ル・ゴフ
Le Goff, Jacques Louis

[生]1924.1.1. ツーロン
[没]2014.4.1. パリ
フランスの歴史学者。アナール学派のリーダーとして活躍した。中世は「驚異的な社会的・経済的発展と,ローマ・カトリック教会(→キリスト教)の巨大な影響力とが相まって近代世界をつくり上げた,ヨーロッパ史の転換期」とみる。著書煉獄の誕生』La Naissance du purgatorie(1981)や『中世の高利貸 金も命も』La Bourse et la vie: économie et religion au Moyen Âge(1986)などでその考え方を展開した。第2次世界大戦中は,ドイツ占領下のフランスのレジスタンス組織マキに協力したが,その後エコール・ノルマル・シュペリュールに入学,歴史学者のフェルナン・P.ブローデルやリュシアン・フェーブルと出会う。その後,高等研究実習院 EPHE第6部門に入った。1972年にはブローデルの後任として EPHE第6部門の部門長,および『アナール』誌の編集責任者に就任。1975年社会科学高等研究院 EHESS創設に携わり,1993年に退官その他の著書に『アッシジの聖フランチェスコ』Saint François d'Assise(1999),『聖王ルイ』Saint Louis(1996)などがある。

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大学事典 「ル・ゴフ」の解説

ル・ゴフ
Jacques

フランスの中世史家。南仏トゥーロンの生まれ。高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリウール)に入学し,プラハカレル大学オックスフォード大学,ローマのフランス学院でも学ぶ。リール大学を経て1960年に高等研究実習院(EPHE)第六部門にポストを得る。1969年に『アナール』誌の編集に加わり,歴史人類学や心性史等に関心を寄せながら,アナール学派第3世代として活躍する。1972年,F. ブローデルの後任として第六部門長となり,75年に同部門が社会科学高等研究院(EHESS)として独立するのに中心的な役割を果たした。『中世の知識人』(1957年)では,12世紀の知識人の誕生から13世紀の大学と知識人,14~15世紀のユマニストの出現という大きな流れの中で,当時の知識人について論じている。『中世西欧文明』(1964年),『もうひとつの中世のために』(1977年),『煉獄の誕生』(1981年),『アッシジの聖フランチェスコ』(1999年),『ヨーロッパは中世に誕生したのか?』(2003年),『中世とは何か』(2003年)などがあり,邦訳も多い。
著者: 白鳥義彦

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百科事典マイペディア 「ル・ゴフ」の意味・わかりやすい解説

ル・ゴフ

フランスの中世史家。ヴァール県トゥローンに生まれる。1945年に高等師範学校を卒業後,パリ,プラハ,オックスフォードの各大学に学び,1950年高等教育教授資格試験に合格。1960年高等研究院第6セクション(現在の社会科学高等研究院)に迎えられ,中世史研究に没頭する。1969年に《アナール》の編集スタッフに加わり,マルク・ブロック,リュシアン・フェーブルに始まるアナール学派を受け継ぎ,1972年にはブローデルの後をついで高等研究院第6セクションの責任者となる。〈アナール学派〉第3世代を代表する中世史家であり,歴史人類学への移行に大きな役割を果たした。著作に《もうひとつの中世のために》(1977年),《煉獄の誕生》(1981年),《聖王ルイ》(1996年)などがある。

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