ルシャプリエ法(読み)ルシャプリエほう

改訂新版 世界大百科事典 「ルシャプリエ法」の意味・わかりやすい解説

ル・シャプリエ法 (ルシャプリエほう)

フランス革命の中で定められた団結禁止法(1791年6月)。正式名は〈同一の身分および職業労働者および職人の集合に関するデクレ(法令)〉。提案ル・シャプリエIssac-René-Guy Le Chapelier(1754-94)の名を付してル・シャプリエ法と呼ばれる。同業組合ギルド)廃止の延長線上で生まれた。革命前,チュルゴ勅令(1776)が重農主義の〈自由放任論(レッセ・フェール)〉を土台とした〈労働の自由〉の観念を根拠として,産業発展の桎梏(しつこく)となっていた同業組合を廃止した。他方,労働者たる職人層は彼らの同職的団体(コンパニョナージュ)によって相互援助・雇用条件改善等をはかっていたが,チュルゴはこれも個人の〈労働の自由〉を束縛するものとして同勅令によって禁止した。チュルゴの改革は挫折したが,この課題は1789年8月4日夜の封建制廃棄の決議に引きつがれ,ダラルド法(1791年3月)で親方の同業組合の禁止が確定した。これによって親方層の束縛から解放された職人たちの運動は活発化し,パリの大工職人を先頭に印刷工,蹄鉄工等の職人の賃金率改定の運動が広がった。ル・シャプリエ法は直接にはこの状況を鎮静させるために団結を禁止したものであるが,根本的には〈労働の自由〉の立場から職人層をいっさいの団体的拘束・保護から解き放ち,自由な労働者を創出することになった。この法は農業労働者,家内使用人にも拡大された。なお,団結禁止体制は1864年まで続いた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルシャプリエ法」の意味・わかりやすい解説

ル・シャプリエ法
るしゃぷりえほう

フランス革命中、1791年6月、国民議会可決され、労働者の団結禁止を目的とした法。議員主唱者のル・シャプリエIsaac René Guy Le Chapelier(1754―94)の名でよばれるが、正式には「同一の身分、職業の労働者および職人の集合に関する法」という。すでに廃止されていた同業組合の再建を禁止し、同一の職業の市民が共通の利益のために集合することを禁じているが、これは、各個人の個別的利益、および全体的利益だけの存在を認め、したがって中間的利益を守る中間団体を否定する理念に基づくといわれる。続いて、集会首謀者、または集会を強要した者には罰金や公民権停止、あるいは禁錮刑を科し、脅迫や暴力を伴う場合は公安を乱すものとして処罰すること、などが定められている。事業主、商店主をも対象としているが、中心は労働者であった。この法は革命後も存続し、フランスで罷業権や結社権が認められたのは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてである。

[山上正太郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルシャプリエ法」の意味・わかりやすい解説

ル・シャプリエ法
ル・シャプリエほう
Loi de Le Chapelier

1791年6月 14日フランスの国民議会で,I.ル・シャプリエの動議によって成立した法令。「同身分,同職業の市民によるあらゆる種類の同業組合 (コルポラシオン) を廃止することはフランス憲法の基本的根底の一つである」とし,「ある職業の市民が,いわゆる共通の利害のために結集すること」を禁じた。これは旧来のギルドを廃して営業の自由を保証するために定められたが,同時にこれによって労働者の団結,罷業,騒擾はきびしく禁止された。同法は 1864年5月のナポレオン3世の団結権譲歩によって一部は緩和されたが,完全に廃止されたのは 84年の結社法 (バルデック=ルソー法) による。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ルシャプリエ法」の解説

ル=シャプリエ法
ル=シャプリエほう
Loi le Chapelier

フランス革命時代の1791年6月14日,憲法制定議会が制定した労働者の団結禁止法
ル=シャプリエの提案で可決。当時大きな反対はなかった。この法は革命後も存続し,フランスでストライキ権や団結権が認められたのは,19世紀後半のことである。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ルシャプリエ法」の解説

ル・シャプリエ法(ル・シャプリエほう)
Loi Le Chapelier

1791年6月14日フランスの国民議会の発した法律。同一職種の職人,労働者の結社,請願,賃金協定を禁じる。名称は提案者の名による。革命立法中,最も長く失効せず,1864年まで存続。

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