レセルピン(英語表記)reserpine

翻訳|reserpine

精選版 日本国語大辞典 「レセルピン」の意味・読み・例文・類語

レセルピン

〘名〙 (reserpine) 血圧降下剤一種インドに産するインド蛇木という木の根から抽出されるアルカロイド中の最有効成分で、現在は合成される。化学式 C33H40O9N2 〔薬の効用(1964)〕

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デジタル大辞泉 「レセルピン」の意味・読み・例文・類語

レセルピン(reserpine)

南アジア産の常緑低木インド蛇木じゃぼくの根に含まれるアルカロイドの一種。抗高血圧薬として用いる。

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改訂新版 世界大百科事典 「レセルピン」の意味・わかりやすい解説

レセルピン
reserpine



インドジャボクなどの根から抽出されるアルカロイドの一種。ラウオルフィア属植物からはレセルピンのほかに十数種のアルカロイドが分離されているが,レセルピンは1952年に単離されて化学構造が決定され,56年に全合成された。中枢神経系に働いて不安・緊張を軽減し,精神を安定させる。バルビツレートと異なり,かなりの量を与えても容易に覚醒させることができる。同時に交感神経末端でノルアドレナリンを減少させるため,血圧下降,心拍数減少,瞳孔縮小,体温下降などの一連の反応が起こる。内分泌系に対しては脳下垂体の副腎皮質刺激ホルモンACTH)や抗利尿ホルモンの分泌を促進し,性腺刺激ホルモン分泌を抑制する。常用量は1日1~6mg(内服),1回1~2mg(皮下注射,筋肉注射)で,統合失調症,躁(そう)病,老人性精神病などの精神運動興奮,神経症に用いられるが,うつ病悪化させる。種々の点でフェノチアジン誘導体や新たに開発された薬物のほうがすぐれているので,現在は主として抗高血圧薬として用いられている。副作用として,抑うつ,自殺の傾向,錐体外路系障害,パーキンソニズム下痢胃潰瘍の悪化,鼻閉,徐脈,起立性低血圧,内分泌への影響による性的不能などがある。
向精神薬
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レセルピン」の意味・わかりやすい解説

レセルピン
れせるぴん
reserpine

降圧・鎮静剤で、インド、パキスタンミャンマースリランカマレーシア、フィリピンに広く自生するキョウチクトウ科の小低木インドジャボクRauwolfia serpentina Benth.の根より抽出されたアルカロイドの一種。白色ないし淡黄色の結晶または結晶性粉末で、においはない。降圧作用のほか、鎮静・静穏作用があり、各種の高血圧症およびフェノチアジン系薬物の使用困難な統合失調症の治療に用いられる。

 製剤には、散剤(主として0.1%)、錠剤(0.1ミリグラム、0.25ミリグラム)、注射剤(1ミリリットル中0.3ミリグラム、0.5ミリグラム、1ミリグラム、2.5ミリグラムの各種)がある。降圧の目的には1日0.2~0.5ミリグラムを1~3回に分けて経口投与し、鎮静の目的では1日0.2~2ミリグラムより始めて最高1日10ミリグラムまで経口投与する。劇薬で、極量は1日10ミリグラム(経口)、1回5ミリグラム、1日10ミリグラム(皮下・筋肉内注射)である。

[幸保文治]

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化学辞典 第2版 「レセルピン」の解説

レセルピン
レセルピン
reserpine

C33H40N2O9(608.70).キョウチクトウ科のインド蛇木より得られるRauwolfiaアルカロイドの一種.白色または淡黄色の結晶.分解点265 ℃.-117°(クロロホルム).氷酢酸,クロロホルムに易溶,メタノール,エタノールに難溶,水,エーテルに不溶.λmax 216,267,295 nm(log ε 4.79,4.23,4.01).鎮静作用,血圧降下作用があり,精神安定剤として用いられる.温和に加水分解すると,メチルレセルパートと3,4,5-トリメトキシ安息香酸とに分解する.3位の異性体(イソレセルピン)は薬理作用が弱い.[CAS 50-55-5]

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百科事典マイペディア 「レセルピン」の意味・わかりやすい解説

レセルピン

化学式はC33H4(/0)O9N2。キョウチクトウ科植物インドジャボクなどに含まれるアルカロイド。白色結晶。持続的な血圧降下作用,鎮静作用,抗統合失調症様症状作用などがあり,血圧降下薬として用いる。眠気,浮腫などの副作用を呈することもある。劇薬。
→関連項目インドジャボク血圧降下薬

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レセルピン」の意味・わかりやすい解説

レセルピン
reserpine

C33H40N2O9 。キョウチクトウ科の植物インドジャボク Rauvolfia serpentinaに含まれるアルカロイドの一種。水溶液は弱塩基性。酸性溶液あるいは露光後の溶液はケイ光を有する。血圧降下作用,鎮静作用を示すため,抗高血圧剤,抗精神病薬として使われる。

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世界大百科事典(旧版)内のレセルピンの言及

【セロトニン】より

…LSD‐25などはこの例である。またレセルピンreserpineは結合性のセロトニンを遊離させ分解を促進するため精神安定作用をもつ。上生体(松果腺)には,水酸基の部分にメチル化を受けた脂溶性のメラトニンmelatoninが存在する。…

【アルカロイド】より

…キニーネは代表的苦味物質でもある。(3)ラウオルフィアアルカロイド インドジャボクのアルカロイドでレセルピンなどを含む。レセルピンは血圧降下作用,静穏作用を有し,中枢神経系や交感神経末端の化学伝達物質を枯渇させることがその作用機序とされる。…

【血圧降下薬】より

…プロプラノロールやその他のいわゆるβ受容体遮断薬も血圧降下作用をもつが,その作用部位は主として中枢神経系で,交感神経の興奮を減らすものと考えられている。レセルピンを代表とするインドジャボクのアルカロイド類は,中枢での静穏作用と,末梢での交感神経終末から興奮伝達物質のノルアドレナリンを枯渇させる作用とがともに血圧降下に寄与している。グアネチジンは,交感神経興奮と神経終末からのノルアドレナリン遊離との連関を遮断して,血管に交感神経の興奮が伝わらなくする。…

【血管拡張薬】より

…(3)ヒドララジン,ニトロプルシドナトリウムなども直接血管に作用して拡張させる薬物で,主として血圧降下薬として使われる。(4)レセルピン,グアネチジン,α‐遮断薬,β‐興奮薬など交感神経支配に影響を及ぼして血管拡張を起こすものは,血圧降下薬として,また末梢血管の痙攣(けいれん)に由来する障害の治療薬として利用される。【粕谷 豊】。…

【向精神薬】より

…49年にオーストラリアのケイドがリチウムの抗躁(そう)病作用をみつけた。52年には抗ヒスタミン薬と抗マラリア薬との交点にあったクロルプロマジンと,インドの民間療法から発見されたレセルピンとがつくられ,劇的な抗精神病作用をもつことがわかった。筋弛緩薬,メフェネシンの誘導体であるメプロバメートに抗不安作用が確かめられたのは55年であった。…

【自律神経薬】より

…α遮断薬やβ遮断薬と異なり,受容体に直接結合する交感神経興奮薬の作用は遮断できない。グアネチジン,ベタニジン,レセルピンなどの薬物がこれに属する。血管を拡張させ血圧を下げる。…

【セロトニン】より

…LSD‐25などはこの例である。またレセルピンreserpineは結合性のセロトニンを遊離させ分解を促進するため精神安定作用をもつ。上生体(松果腺)には,水酸基の部分にメチル化を受けた脂溶性のメラトニンmelatoninが存在する。…

※「レセルピン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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