翻訳|reserpine
インドジャボクなどの根から抽出されるアルカロイドの一種。ラウオルフィア属植物からはレセルピンのほかに十数種のアルカロイドが分離されているが,レセルピンは1952年に単離されて化学構造が決定され,56年に全合成された。中枢神経系に働いて不安・緊張を軽減し,精神を安定させる。バルビツレートと異なり,かなりの量を与えても容易に覚醒させることができる。同時に交感神経末端でノルアドレナリンを減少させるため,血圧下降,心拍数減少,瞳孔縮小,体温下降などの一連の反応が起こる。内分泌系に対しては脳下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)や抗利尿ホルモンの分泌を促進し,性腺刺激ホルモン分泌を抑制する。常用量は1日1~6mg(内服),1回1~2mg(皮下注射,筋肉注射)で,統合失調症,躁(そう)病,老人性精神病などの精神運動興奮,神経症に用いられるが,うつ病は悪化させる。種々の点でフェノチアジン誘導体や新たに開発された薬物のほうがすぐれているので,現在は主として抗高血圧薬として用いられている。副作用として,抑うつ,自殺の傾向,錐体外路系障害,パーキンソニズム,下痢,胃潰瘍の悪化,鼻閉,徐脈,起立性低血圧,内分泌への影響による性的不能などがある。
→向精神薬
執筆者:福田 英臣
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降圧・鎮静剤で、インド、パキスタン、ミャンマー、スリランカ、マレーシア、フィリピンに広く自生するキョウチクトウ科の小低木インドジャボクRauwolfia serpentina Benth.の根より抽出されたアルカロイドの一種。白色ないし淡黄色の結晶または結晶性粉末で、においはない。降圧作用のほか、鎮静・静穏作用があり、各種の高血圧症およびフェノチアジン系薬物の使用困難な統合失調症の治療に用いられる。
製剤には、散剤(主として0.1%)、錠剤(0.1ミリグラム、0.25ミリグラム)、注射剤(1ミリリットル中0.3ミリグラム、0.5ミリグラム、1ミリグラム、2.5ミリグラムの各種)がある。降圧の目的には1日0.2~0.5ミリグラムを1~3回に分けて経口投与し、鎮静の目的では1日0.2~2ミリグラムより始めて最高1日10ミリグラムまで経口投与する。劇薬で、極量は1日10ミリグラム(経口)、1回5ミリグラム、1日10ミリグラム(皮下・筋肉内注射)である。
[幸保文治]
C33H40N2O9(608.70).キョウチクトウ科のインド蛇木より得られるRauwolfiaアルカロイドの一種.白色または淡黄色の結晶.分解点265 ℃.-117°(クロロホルム).氷酢酸,クロロホルムに易溶,メタノール,エタノールに難溶,水,エーテルに不溶.λmax 216,267,295 nm(log ε 4.79,4.23,4.01).鎮静作用,血圧降下作用があり,精神安定剤として用いられる.温和に加水分解すると,メチルレセルパートと3,4,5-トリメトキシ安息香酸とに分解する.3位の異性体(イソレセルピン)は薬理作用が弱い.[CAS 50-55-5]
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…LSD‐25などはこの例である。またレセルピンreserpineは結合性のセロトニンを遊離させ分解を促進するため精神安定作用をもつ。上生体(松果腺)には,水酸基の部分にメチル化を受けた脂溶性のメラトニンmelatoninが存在する。…
…キニーネは代表的苦味物質でもある。(3)ラウオルフィアアルカロイド インドジャボクのアルカロイドでレセルピンなどを含む。レセルピンは血圧降下作用,静穏作用を有し,中枢神経系や交感神経末端の化学伝達物質を枯渇させることがその作用機序とされる。…
…プロプラノロールやその他のいわゆるβ受容体遮断薬も血圧降下作用をもつが,その作用部位は主として中枢神経系で,交感神経の興奮を減らすものと考えられている。レセルピンを代表とするインドジャボクのアルカロイド類は,中枢での静穏作用と,末梢での交感神経終末から興奮伝達物質のノルアドレナリンを枯渇させる作用とがともに血圧降下に寄与している。グアネチジンは,交感神経興奮と神経終末からのノルアドレナリン遊離との連関を遮断して,血管に交感神経の興奮が伝わらなくする。…
…(3)ヒドララジン,ニトロプルシドナトリウムなども直接血管に作用して拡張させる薬物で,主として血圧降下薬として使われる。(4)レセルピン,グアネチジン,α‐遮断薬,β‐興奮薬など交感神経支配に影響を及ぼして血管拡張を起こすものは,血圧降下薬として,また末梢血管の痙攣(けいれん)に由来する障害の治療薬として利用される。【粕谷 豊】。…
…49年にオーストラリアのケイドがリチウムの抗躁(そう)病作用をみつけた。52年には抗ヒスタミン薬と抗マラリア薬との交点にあったクロルプロマジンと,インドの民間療法から発見されたレセルピンとがつくられ,劇的な抗精神病作用をもつことがわかった。筋弛緩薬,メフェネシンの誘導体であるメプロバメートに抗不安作用が確かめられたのは55年であった。…
…α遮断薬やβ遮断薬と異なり,受容体に直接結合する交感神経興奮薬の作用は遮断できない。グアネチジン,ベタニジン,レセルピンなどの薬物がこれに属する。血管を拡張させ血圧を下げる。…
…LSD‐25などはこの例である。またレセルピンreserpineは結合性のセロトニンを遊離させ分解を促進するため精神安定作用をもつ。上生体(松果腺)には,水酸基の部分にメチル化を受けた脂溶性のメラトニンmelatoninが存在する。…
※「レセルピン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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