レパルティミエント(読み)れぱるてぃみえんと(その他表記)repartimiento

日本大百科全書(ニッポニカ) 「レパルティミエント」の意味・わかりやすい解説

レパルティミエント
れぱるてぃみえんと
repartimiento

スペイン語で「分配」「割当て」を意味するが、スペイン史上とくにレコンキスタ(国土回復戦争)とアメリカ植民地形成期における土地分与方法およびその土地をさす。レコンキスタ時代には、アラゴンアンダルシア、マジョルカ、レバンテなどの地方において行われたが、13世紀後半、アラゴン王ハイメ1世がイスラム教徒から土地を奪取したとき、部将に割当地を与えたのが顕著な例である。その後のアメリカ植民地形成期においては、1497年、スペイン王室から権利を与えられたコロンブスエスパニョーラ島で採用し、コンキスタドレス征服者)に土地と原住民を与え、彼らからの貢納と労働力を獲得せしめた。これは、のちに西インド諸島全域において行われたが、強制労働に基づく過酷な原住民搾取は、その大幅な人口減をもたらし、1502年からエンコミエンダ(委託)制に修正された。

[深澤安博]

『飯塚一郎著『大航海時代へのイベリア』(1981・中央公論社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「レパルティミエント」の意味・わかりやすい解説

レパルティミエント
repartimiento[スペイン]

本来は〈分配〉〈割当て〉の意だが,スペイン新大陸植民地史において三つの異なった意味に用いられる。(1)エンコミエンダ(初期の原住民統治制度)の異称。征服直後,ことにカリブ海の島で用いられた。(2)原住民労働力割当制。1549年エンコミエンダ制下の私賦役が禁じられた後,メキシコで採用された植民地当局統制下の有償強制労働制度。アステカ国家の傭役制の後身であり,原地語でコアテキルcoatequilとも呼ばれた。割当てを受けるのは原則として公共事業もしくは公共福祉にかかわる私企業(とくに鉱山,小麦農園)に限られる。労働は1週間ごとの交代制で,各原住民村は毎月曜日に定められた数の労働者(鉱山ならば成年男子の4%,農業は季節により2~10%)を送り出し,彼らは担当官吏の手によって事業主間に分配され,翌週月曜日に交代する。王権は1601年,09年の勅令でこの慣行を法制化し,賃金(日給1~1.5レアル)や食糧遺漏なくあてがわれ,また濫用のないように意を用いたが,あまり実効はなかった。原住民間に賃金労働制度が定着するにともない,1633年鉱山業を除くすべての部門において廃止された。ペルーについては〈ミタ〉の項目を参照されたい。(3)商業レパルティミエント。地方官コレヒドールが職権を濫用して,管轄地域の原住民に物財を強制的に売りつける慣行をいう。いくつかの地域では,地方官がやがて商人の代理人となり,資金や原料を強制的に原住民に貸し付けて特定商品を生産させ,これを買い取るようになる。18世紀には本国官界で大いに問題とされた。
エンコミエンダ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レパルティミエント」の意味・わかりやすい解説

レパルティミエント
repartimiento

スペインが新世界の植民地経営のために採用した先住民 (インディオ) の労働力徴発の制度。語意は「分配」で,レコンキスタ (国土回復運動 ) 期に占領地,戦利品の処分に使われたもの。アメリカにおいて,最初植民地開発の功労者に対し,土地とともに先住民を割当てて,その貢納金と労働により利益を得させたのを始りとする。この事実上の奴隷制が極端な先住民の酷使によって行きづまり,エンコミエンダ制の採用となったが,アステカ,インカの征服によって支配領域が拡大すると,彼らの労働徴発制度を継承利用して,レパルティミエントの復活となった。この制度は 1575年頃から形式を整えたが,エンコミエンダに属さない先住民がコングレガシオン (小村落) に集められ,これを単位に一定数の労働力を交代で強制徴発する組織がつくられた。アンデス地方ではミータ,メキシコではクアテキルなどと呼ばれ,労働に対しては期間その他の制限があり,職種に応じて報酬が支払われることになっていたが,実際の運営では履行されず,植民地期間の大部分にわたって先住民からの搾取が続いた。

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世界大百科事典(旧版)内のレパルティミエントの言及

【ラテン・アメリカ】より

…他方,スペインおよびポルトガルの植民者による土地および先住民労働の支配は,法制度的には植民地全域に及んだ。 スペイン植民地においては,土地については,レパルティミエントrepartimiento,グラシアgraciaないしメルセーmercedと呼ばれる分与地が植民者に分与された。この分与地はインディオの占有地を侵してはならないとされている。…

【ラテン・アメリカ】より

…鉱山開発の進展にともなって農業,牧畜も発展し,鉱山を核とする地域間の分業体制も整っていった。 一方,先住民保護運動の進展の結果,無償の強制労働は法的に禁止され新たにレパルティミエント制(アンデス地域ではミタ制)が確立されたが,実質上は奴隷労働と大差なく,先住民は引き続き過酷な労働を強いられた。征服による殺戮と居住地の強制的再編,たび重なる疫病のまんえんと過酷な労働の結果,先住民人口は征服後1世紀で10分の1以下に減少し,植民地経済は深刻な労働力不足に直面した。…

※「レパルティミエント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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