レフコウィッツ(英語表記)Lefkowitz, Robert J.

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「レフコウィッツ」の解説

レフコウィッツ
Lefkowitz, Robert J.

[生]1943.4.15. ニューヨーク,ブロンクス
アメリカ合衆国の医師,分子生物学者。フルネーム Robert Joseph Lefkowitz。1962年コロンビア大学で化学学士号を取得後,心臓内科医を志して 同大学医科大学院で学び,1966年医学博士号を取得。ベトナム戦争中に軍務に従事したことを契機にアメリカの国立衛生研究所 NIHに勤務し,アドレナリン受容体(→アドレナリン)の研究に出会う。マサチューセッツ総合病院を経て 1973年からデューク大学に勤務し,1977年教授,1982年ジェームズ・B.デューク教授職につく。1976年からハワード・ヒューズ医学研究所研究員も務める。デューク大学で,放射性物質標識を使ってβアドレナリン受容体蛋白質をつきとめ,さらに受容体がグアノシン三リン酸 GTP結合蛋白質(G蛋白質)と複合体をつくることがわかった。1984年,自身の研究室にブライアン・K.コビルカが加わり,受容体の遺伝子探索に力を入れた結果,1986年にβアドレナリン受容体遺伝子を釣り上げることに成功した。2012年,外部からの情報を細胞内部に伝える働きをする G蛋白質共役受容体 GPCRについて画期的な研究をした功績により,コビルカとともにノーベル化学賞受賞した。GPCRは細胞膜表面にある受容体の一大グループの総称で,2人はその概念を確立し,代表的存在であるβアドレナリン受容体などを単離し,さらに特徴的な遺伝子構造も明らかにした。1988年にアメリカ科学アカデミー,アメリカ芸術科学アカデミーの会員に選ばれた。2007年にショー賞,ナショナル・メダル・オブ・サイエンスを受賞。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「レフコウィッツ」の解説

レフコウィッツ
れふこうぃっつ
Robert Joseph Lefkowitz
(1943― )

アメリカの医学者、分子生物学者。ニューヨーク市ブロンクス区生まれ。1959年にブロンクス科学高校を卒業、1962年コロンビア大学で化学の学士号を取得。臨床の内科医になりたくて、同大学の医学部に進学し、1966年に博士号を取得した。同大学で研修医として勤務後、1968年からアメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)の臨床研究員として働き、1970年からハーバード大学医学部のマサチューセッツ総合病院でふたたび心臓疾患の研修医となる。1972年付設の研究所を経て、1973年にデューク大学メディカル・センター助教授、1977年同大学医学部教授。1976年からハワード・ヒューズ研究所研究員。1973年から1976年までアメリカ心臓協会の認定研究員。

 レフコウィッツは心臓内科医として、血圧を上昇させたり、心臓の鼓動を速めたりするホルモン「アドレナリン」などに着目し、1968年から副腎(ふくじん)皮質から放出されたアドレナリンを、細胞がどのように認識するのか研究を始めた。放射性ヨウ素を目印としてつけたアドレナリンを使い、細胞表面にどのように結合するか、受容体を追跡。細胞膜の中にある「β(ベータ)2アドレナリン受容体」を同定した。この受容体にホルモンが結合すると、細胞内では「Gタンパク質」という、代謝などシグナル伝達に関連する物質を活性化することを明らかにした。1980年代に入ると、β2アドレナリン受容体の遺伝子解析に乗り出し、1986年に大学院生のブライアン・コビルカとともに遺伝子を同定した。β2アドレナリン受容体の遺伝子を調べると、この受容体は、螺旋(らせん)構造のリボン状のタンパク質が、細胞膜の内と外を行ったり来たりして7回貫通する構造をもつことがわかった。驚いたことにアドレナリン以外の多くのホルモンの受容体も同様な構造をしていた。一連の受容体は、Gタンパク質を活性化させることから「Gタンパク質共役受容体(GPCR:G protein-coupled receptor)」とよばれている。

 その後、スタンフォード大学に移ったコビルカらのグループは、2011年にβ2アドレナリン受容体を結晶化することに成功した。これによってGPCRによるシグナル伝達の仕組みが詳細に解明された。細胞の外でホルモンと結合した受容体は、細胞膜表面のすきまを少し広げ、そこにGタンパク質がくっつくことで、さまざまな反応が進んでいくという流れである。他のGPCRも同様の仕組みでシグナル伝達が進んでいくことがわかった。GPCRを活性化したり、抑制したりすることで、高血圧、狭心症、心疾患、潰瘍(かいよう)などに関連する病気の治療につながる創薬に役だてられると期待されている。GPCRは、人間では1000種類以上がみつかっており、このうち半分が嗅覚(きゅうかく)に関連するもので、3分の1は、ドーパミン、セロトニン、プロスタグランジンヒスタミンなどの高血圧、狭心症、心疾患、潰瘍などに関連する神経伝達物質やホルモンの受容体とされている。

 1988年ガードナー国際賞、1992年ブリストル・マイヤーズ・スクイブ賞、2001年フレッド・コンラッド・コッホ賞、ジェシー・スチーブンソン・コバレンコ・メダル(アメリカ科学アカデミー)、2007年ショウ賞、アメリカ国家科学賞、2009年アメリカ心臓協会の卓越研究賞を受賞。2012年、「Gタンパク質共役受容体(GPCR)の研究」で、コビルカとともにノーベル化学賞を受賞した。

[玉村 治 2021年9月17日]

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