レンギョウ(読み)れんぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「レンギョウ」の意味・わかりやすい解説

レンギョウ
れんぎょう / 連翹
[学] Forsythia suspensa Vahl

モクセイ科(APG分類:モクセイ科)の落葉低木。中国原産。枝は長く伸び、先が地につくと発根する。葉は対生し、卵形で長さ4~8センチメートル、先はとがり、縁(へり)の上半部に鋸歯(きょし)がある。3小葉の複葉が混じるものが多い。3~4月、葉の展開に先だって、径約2.5センチメートルの黄色花を開く。花冠は深く4裂し、裂片は倒卵状楕円(だえん)形で内面は橙(だいだい)色を帯びる。雄しべは2本。果実は長卵形の蒴果(さくか)で先はとがり、10~11月、褐色に熟して2裂する。類似種のシナレンギョウF. viridissima Lindl.は中国中・南部原産。葉は長楕円形で両端はとがる。チョウセンレンギョウvar. koreana Rehderは朝鮮半島原産。葉は長卵形で先はとがり、花は濃黄色でやや大きい。いずれも花木として広く栽培される。日本に野生するヤマトレンギョウF. japonica Makinoは中国地方に分布し、花は径約2センチメートルと小さい。四国の小豆(しょうど)島には別種ショウドシマレンギョウがある。レンギョウの名は、トモエソウの中国名である連翹が誤って用いられ、レンギョウとなった。レンギョウ属はヨーロッパ、アジアに6種ある。

[小林義雄 2021年7月16日]

栽培

陽樹で、とくに土質を選ばず成長が速く、刈込みに耐え、萌芽(ほうが)力がある。繁殖挿木が容易で、株分け、実生(みしょう)もできる。

[小林義雄 2021年7月16日]

薬用

漢方では果実を連翹(れんぎょう)といい、解熱解毒、排膿(はいのう)、消炎剤として感冒流感などの熱性病の初期のほか、腫(は)れ物、皮膚病、るいれきなどの治療に用いる。

[長沢元夫 2021年7月16日]

文化史

花卉(かき)よりも薬用の歴史が古い。『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』には、るいれき、腫(は)れ、解熱、解毒などの薬として載る。日本で連翹の名は『出雲国風土記(いずものくにふどき)』(733)の意宇(おう)郡と秋鹿(あいか)郡の山野の草木の一つとして初見するが、現在のレンギョウかどうか疑わしい。『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』は以多知久佐(いたちくさ)や以太知波勢(いたちはぜ)をあてる。『延喜式(えんぎしき)』は雑薬に分類、伊賀、尾張(おわり)、下総(しもうさ)、丹波(たんば)、播磨(はりま)、阿波(あわ)、讃岐(さぬき)を産地にあげる。花は中国では宋(そう)の『洛陽花木(らくようかぼく)記』に記録されるが、日本では『立花大全(りっかだいぜん)』(1683)、『立華正道(りっかしょうどう)集』(1684)が花としての扱いが早い。

[湯浅浩史 2021年7月16日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「レンギョウ」の意味・わかりやすい解説

レンギョウ (連翹)
golden-bell (tree)
Forsythia suspensa (Thunb.) Vahl.

早春に鮮黄色の花を枝いっぱいにつけるモクセイ科の株立ちになる落葉低木。葉は対生し,通常卵形から楕円状卵形で柄がある。花は前年枝の葉腋(ようえき)に1~数個つき,葉の展開前に咲き,美しい。花冠は深く4裂し,長さ約2.5cm。果実は卵形で長さ2cmあまり。中国大陸原産で日本には17世紀に,あるいはもっと以前に渡来したといわれる。挿木で簡単にふえ,刈込みにも強く,現在でもレンギョウ類のなかでは,最も多く栽植されている。果実は連翹と呼ばれ,解熱,解毒,瘰癧(るいれき),にきびの治療などに用いられる。日本の岡山県の石灰岩地域や小豆島には小低木で,花も小型のヤマトレンギョウF.japonica Makinoが分布している。また中国大陸産のシナレンギョウF.viridissima Lindl.は新枝が四稜形で,冬には茶色になることでレンギョウから区別されるが,この種そのものの品種やレンギョウとの交配品種F.intermedia Zab.が欧米で多数栽培されている。レンギョウ属は東アジアとヨーロッパ東部(1種のみ)に数種が分布し,いずれも黄色の美しい花を開く。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「レンギョウ」の意味・わかりやすい解説

レンギョウ

中国原産のモクセイ科の落葉低木。各地の庭などに植えられる。高さ3m内外,枝は中空でよくのび,たれ下がる。葉は卵形の単葉であるが,3出複生するものもある。3〜4月,葉の出る前に,腋芽に径約2.5cmの花をつける。花冠は黄色で4裂し,基部は短い筒形となる。果実は卵形で長さ約5cm。近縁のシナレンギョウは中国原産で,髄には薄板があり,葉は単葉。4月,新芽と同時に黄色の花を開く。チョウセンレンギョウは朝鮮原産で,まれに植えられる。前種に似るが,葉の下半部が幅広い。3種ともに庭木,切花とされる。繁殖はさし木,株分けによる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android