ロビイング(英語表記)lobbying

翻訳|lobbying

デジタル大辞泉 「ロビイング」の意味・読み・例文・類語

ロビイング(lobbying)

ロビー活動

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改訂新版 世界大百科事典 「ロビイング」の意味・わかりやすい解説

ロビイング
lobbying

各種団体,企業,個人などが,特殊利益や公共的利益などの擁護・増進を目的として議員や政府当局者に接触し,政治的決定形成に影響力を及ぼそうとする活動を指す。圧力団体によって試みられるものが典型的である。20世紀初頭までは,このような活動の主対象立法府であり,〈ロビイング〉という語も,議会のロビーlobby(議員が院外者と面会する控室)で議員に対して行う〈圧力活動〉を意味する語としてアメリカで用いられはじめたのであるが,その後,行政府が,ロビイング活動の主要目標としての重要性を急速に高めてきた。さらに最近では,世論の理解を求め,その支持の動員をはかる目的での圧力団体の対世論活動の活発化が顕著であるが,この種の圧力団体の活動は,間接的ロビイングとして,立法府や行政府を対象とする直接的ロビイングと対比され,またその大衆志向性から〈グラス・ルーツ・ロビイング〉とも呼ばれている。このようなロビイング活動の担い手としての役割を演じるのが,〈ロビイストlobbyist〉にほかならない。

 このようなロビイングは,圧力団体の時代としての現代において,先進民主主義諸国にほぼ共通にみられる現象であるが,その実態は,国ごとにかなり異なっている。日本の場合,議員が,選挙時における支持協力関係に基づいて,議会外の諸利益のために議会内および対政府関係でロビイスト的に活動するところに特徴があり,ロビイストは,まだ十分に確立した専門的職業としては発展していない。事態が日本の場合と似ているのがイギリスで,この国では,労働党労働組合保守党と財界との関係を軸にした政党と圧力団体の連携関係を背景に,議員が議会外の諸利益と連動してロビイスト的役割を果たすことが期待されている。これに対して,アメリカでは,ロビイストが専門的職業として早くから確立しており,ロビイングは,主としてこれらのロビイストによって推進されてきた。現在,多くのアメリカの圧力団体は,首都ワシントンに事務所を設置し,ここを拠点としてロビイング活動を展開しているが,これらの事務所に拠り,団体の代理人として活動するロビイストは,総計1万5000人にも達すると推定されている。問題は,このようなロビイング活動が,とかく議員や政府当局者に対する〈わいろ〉の提供などによる政治的腐敗の原因となりやすいことで,アメリカでは,19世紀末以来のロビイング規制へのさまざまな試みの結果,ついに1946年に〈連邦ロビイング規制法〉が成立し,それ以降アメリカのロビイストは,連邦議会に対して氏名を登録し,四半期ごとの収支報告提出が義務づけられることになった。

 最近に至って,各国におけるロビイングはますます活発化しているが,とくに二つの側面での動向が注目に値しよう。一つは,地方自治体中央政府に対するロビイング活動の活発化にほかならない。日本では,全国知事会,全国都道府県議会議長会,全国市長会,全国市議会議長会,全国町村会,全国町村議会議長会の地方六団体による中央政府に対するロビイング活動がかねてから注目されてきたが,同様の事態が,近年のアメリカでも顕著となり,現在全米州知事会議や合衆国市長会議などのほかに,ニューヨークカリフォルニアの両州をはじめとする大半の州とニューヨーク,ロサンゼルスを含む多数の都市が,連邦議会・政府に対するロビイング活動の目的でワシントンに事務所を設置している。注目をひくもう一つの動向は,国際貿易関係や多国籍企業の発展に端的にみられる現代世界における政治・経済活動の国際化を背景にしたロビイングの国際化で,とくにこのような国際的ロビイング活動の一大中心点となっているワシントンには,外国の諸利益を代弁する外国ロビイストの進出がいちじるしい。なおアメリカでは,これらの外国ロビイストは,〈外国代理人登録法〉によって司法省に登録することが求められている。
圧力団体 →チャイナ・ロビー
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロビイング」の意味・わかりやすい解説

ロビイング
ろびいんぐ
lobbying

圧力団体の利益のために、議会で立法の促進や阻止にあたり、かつ、それに役だつ影響力を行使する院外活動のこと。ロビー活動ともいう。もともとアメリカの議会用語であるが、最近その他の国でも用いられている。ロビーとはもともと議員が院外者と面会する控室のことで、運動員(ロビイスト)がおもにここを舞台として活動したことから、このことばが生まれた。ロビイストは、首府のワシントンや州や地方政府の所在地に常駐し、議事手続、議院規則、法案審議状況についてのその豊富な知識を駆使して、議員ならびに彼らの選挙区の有力者に硬軟両様の諸種の圧力手段を行使する。ワシントン駐在のロビイスト数は1944年に2万人といわれたが、その数は現在もそれを下回らないであろう。ロビイストの職業は弁護士が多く、前議員も有力な資格者である。彼らの活動は、しばしば政治的腐敗を生み出したため、1946年「連邦ロビイング統制法」が制定され、ロビイストは、その氏名、活動等を上下両院事務局に登録することを義務づけられた。彼らの活動方式としては、直接議会に働きかける直接ロビイングと、世論に働きかけ、動員することによって間接的に立法に影響を与える間接ロビイングがある。大企業などでは、企業内に政治活動プログラムを設置し、草の根運動の展開や協調戦線coalitionの結成が目ざされる。また最近の傾向としては、議会以外の行政府と裁判所、とくに行政府がロビイングの重要な対象となってきている。

[田口富久治]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロビイング」の意味・わかりやすい解説

ロビイング
lobbying

圧力団体 (→プレッシャー・グループ ) が政策決定に影響を与えようとする活動。おもにアメリカでの実態をさす。ロビイスト lobbyistはこの活動の直接のにない手。圧力団体の代表が議会のロビーで議員を説得したことに由来するこの活動は,今日法案審議過程だけでなく立法,行政,司法を含む政治過程全体に向けられ,その戦術も有力議員への個別の説得から関係者全員への組織的な働きかけ,選挙民を動員する草の根ロビイングまで法が許す手段のすべてにわたる。そのためロビイストも法律家から PRコンサルタント,世論調査業,元官僚,政治家,企業・団体の関係部門スタッフなどその肩書はさまざまである。もっともこのアメリカの状況は,日本の官僚制やヨーロッパの政党・団体に匹敵する政策立案の心臓部が欠如していることにもよる。ロビイストと議員の癒着に向けられる批判の目もきびしくなり,1995年上院では倫理委員会による規則が全会一致で採択された。一方で,国際化が進むなか,ワシントン D.C.では日本ロビイと呼ばれる集団が急成長,東京でも欧米諸国の在日関係機関などに代表される外国ロビイの存在が注目されはじめている。 (→ロビイング規制法 )

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世界大百科事典(旧版)内のロビイングの言及

【圧力団体】より

…選挙過程における圧力団体の活動が,この対議会活動の有効性の助長をねらいとしていることはいうまでもない。ここでの圧力団体の活動は,議員に対する直接的接触を通じてその利益の擁護・増進をはかる〈ロビイング〉活動を軸としているが,アメリカでは,このロビイング活動に従事する〈ロビイスト〉が専門的職業として確立し,現在首都ワシントンで活動中のロビイストは,1万5000人を超えると推定されている。圧力団体活動の第3の側面は,対政府活動に見いだされるが,この活動は,20世紀における政治の積極化の進行とともに活発化し,ロビイングの重心は,立法ロビイングからしだいに行政ロビイングへと移ってきた。…

※「ロビイング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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