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ワイスマン Weismann, August (Friedrich Leopold)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ワイスマン
Weismann, August (Friedrich Leopold)

[生]1834.1.17. フランクフルトアムマイン
[没]1914.11.5. フライブルク
ドイツの動物学者。ゲッティンゲン大学で医学と化学を学び (1852~56) ,いったんは医者になったが,1861年よりギーセン大学の K.ロイカルトのもとで動物形態学および発生学を研究。 63年にフライブルク大学に移り,同大学教授 (71~1912) 。彼の名を不朽にしている生殖質連続説は,クラゲの生殖に関して以前に行なった観察がヒントとなって立てられたものである。この説の骨子は,種を特徴づける形質が世代を通じて伝達されるのは,形質を決定する物質が生殖細胞に含まれていて,これが親から子へと伝えられるためであるというものであり,86年の『生殖質』 Das Keimplasmaで体系化される。メンデルの法則がまだ世に知られていなかった当時において,理論的考察によって生殖細胞形成の際に生殖質の半減が起ることを推測していた。また,急速に発展しつつあった細胞学の研究成果を自説に結びつけ,染色体が生殖質より構成されていると結論した。生殖質連続説は,遺伝の染色体説の理論的先駆ともみられているが,実証性をそなえておらず,またのちにまちがいであることが判明した個所を含んでいる。彼は,C.ダーウィン進化論に賛同したが,ダーウィンとは異なって獲得形質の遺伝を認めず,その可能性を否定するためネズミの尾を5世代にわたって切断し続けてもそのあとで生れてくるネズミの尾は短くならないことを明らかにした実験を行なった。これは獲得形質遺伝を否定する論拠として,当時は強い説得力をもった。

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デジタル大辞泉の解説

ワイスマン(August Weismann)

[1834~1914]ドイツの動物学者。動物の発生・遺伝・進化の理論研究を行い、生殖質は親から子への連続性をもつが体質の変異は遺伝しないと主張し、ネオダーウィニズムを提唱。著「進化論講義」など。

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百科事典マイペディアの解説

ワイスマン

ドイツの動物学者。ゲッティンゲン,ギーセン等の大学に学び,フライブルク大学教授。生殖質の連続性を強調した〈生殖質連続説〉を提唱した。彼によれば,生殖質とは生殖細胞に含まれる遺伝的要因で,その単位はデータミナントと呼ばれる。
→関連項目石川千代松丘浅次郎

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世界大百科事典 第2版の解説

ワイスマン【August (Friedrich Leopold) Weismann】

1834‐1914
ドイツの動物学者。フランクフルト・アム・マイン生れ。初めゲッティンゲン大学で化学と医学を学び,いったんは医者になったが,ギーセン大学に再入学しおもに昆虫の発生を研究し,その後1912年の定年までフライブルク大学動物学研究所に勤めた。顕微鏡研究で目を酷使し視力が衰えたため後半生は理論面に力を注ぎ,1892年の《生殖質説Das Keimplasma》として結実した。これによると,生殖細胞の核だけはすべての形質の決定因子を保持し続けるが,体細胞は発生の経過とともに決定因子が不均等に分配されてゆき,最終的に少数の決定因子の支配によって組織分化が起こるとされ,獲得形質の遺伝は全面的に否定された。

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大辞林 第三版の解説

ワイスマン【August Weismann】

1834~1914) ドイツの発生学者・遺伝学者。獲得形質の遺伝を全面的に否定し生殖細胞のみが遺伝することを主張、独自の進化学説を展開。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ワイスマン
わいすまん
August Weismann
(1834―1914)

ドイツの生物学者。フランクフルト・アム・マインに生まれる。ゲッティンゲン大学で医学を修め、しばらく開業したが、のちギーセン大学でロイカルトについて発生学や形態学を学ぶ。1863年フライブルク大学医学部私講師、1865年準教授、1873年に教授となり、死の数年前、引退するまで動物学を教えた。若い時代の研究は主として無脊椎(むせきつい)動物の発生であったが、視力を失ったため顕微鏡を使う仕事ができなくなり、思索的研究に転じ、発生・遺伝・進化などに関する優れた哲学的考察を行った。とくに有名なのは、生物の生殖物質の連続性に関する生殖質説で、「有性生殖にあたり、生殖細胞が形成される際、父方からきた染色体(idantとよんだ)と母方からきた染色体とが還元される。そしてこれが精子と卵との合体で旧に復する。還元の際、遺伝子(idoとよんだ)に組換えがおこる。したがってさまざまな遺伝子組合せをもった生殖細胞ができる。それゆえ同じ両親から産まれた子供の間に相違がみられても不思議はない」と主張した。また体細胞と生殖細胞とを区別して考え、前者におこった変異は絶対に遺伝しないとした。さらに生物の進化は自然選択だけによっておこるとし、ダーウィンの自然選択の原理の適用範囲を内部の生殖質まで広げた。この説を自ら「新ダーウィニズム」と名づけ、その後に大きな影響を与えた。主著には『生殖質』(1892)、『進化論講義』(1902)がある。[田島弥太郎]

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世界大百科事典内のワイスマンの言及

【獲得形質】より

…とくにダーウィンは彼の遺伝理論パンゲン説を論ずる中でそのことを述べている。これに対して獲得形質遺伝を否定するものも19世紀末から20世紀にかけ盛んにみられ,ドイツのA.ワイスマンはその代表格である。彼は生殖質連続説を提唱,次代を構成する生殖細胞以外,すなわち体細胞が受けた環境の影響は遺伝とは無関係であることを主張した(1885)。…

【生殖質】より

…1883年A.ワイスマンが提唱した生殖質説で想定した遺伝物質で,遺伝子に似た概念である。この説によれば生殖質は生物の遺伝と生殖に関与するデテルミナントdeterminant(決定要素)とよばれる単位から構成される。…

【前成説】より

…しかし再生の発見につづき奇形発生の研究,動物の発生の比較研究などから,前成説はしだいに不利になっていく。19世紀後半におけるもっとも精緻なA.ワイスマンの発生学説(1892)にも前成説の要素がみられるが,ボネのそれよりもいっそう複雑に構成されており,後成説との境界はあいまいである。後成説【中村 禎里】。…

※「ワイスマン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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