日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ワイツゼッカー(Richard von Weizsäcker)
わいつぜっかー
Richard von Weizsäcker
(1920―2015)
ドイツの政治家。ベルリンの高等学校卒業後、イギリス・オックスフォード大学、フランス・グルノーブル大学に学んだが、第二次世界大戦の勃発(ぼっぱつ)で徴兵され、将校として参戦した。戦後ゲッティンゲン大学に学び1954年卒業。銀行、製薬会社に勤める一方、キリスト教民主同盟(CDU)に入党、若き日のコール連邦議員(のちの首相)と知り合い、その推薦で1969年以降連邦議員となる。1981~1984年西ベルリン市長として、26年続いていた社会民主党市政を保守路線に転換させて注目された。1984年第6代大統領に選ばれ、翌1985年敗戦40周年記念日にナチス・ドイツの蛮行を深く反省する演説を行い、内外に感銘を与えた。1989年大統領再選、同年秋に始まった東欧圏の崩壊とベルリンの壁撤去、翌1990年のドイツ統一には、ヨーロッパと東ドイツ国民への配慮から、慎重な姿勢をとりコール首相とは対照的だった。1990年統一ドイツの大統領に推され、1994年任期終了とともに辞任した。父エルンストはナチ時代の外交官、兄カールは高名な核物理学者である。
[藤村瞬一]
『『荒れ野の40年――ヴァイツゼッカー大統領演説全文』(『岩波ブックレット54』1986・岩波書店)』▽『マルティン・ヴァイン著、鈴木直ほか訳『ヴァイツゼッカー家』(1993・平凡社)』