ワルツ(英語表記)waltz
Walzer[ドイツ]

デジタル大辞泉 「ワルツ」の意味・読み・例文・類語

ワルツ(waltz)

18世紀末ごろにヨーロッパに起こった4分の3拍子舞曲および舞踏。舞踏の伴奏目的としない独立した器楽作品もある。円舞曲

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精選版 日本国語大辞典 「ワルツ」の意味・読み・例文・類語

ワルツ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] waltz ) 舞踊曲の一形式。一九世紀初頭からオーストリアで始まった四分の三拍子の舞曲で、優美、典雅、流麗な曲調が特色。ショパンのワルツに代表される芸術的器楽曲ヨハン=シュトラウスの作に代表されるウインナ‐ワルツ、社交ダンス用のリズム主体にしたワルツなどがある。円舞曲。ワルス。
    1. [初出の実例]「まだワルツがきまりませんなら願ひませうか」(出典:藪の鶯(1888)〈三宅花圃〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「ワルツ」の意味・わかりやすい解説

ワルツ
waltz
Walzer[ドイツ]

18世紀末にオーストリア,南ドイツに生まれ,19世紀から20世紀初めまで社交ダンスのうち最も人気のあった3拍子の舞曲。円舞曲とも訳される。ドイツ語のwalzen(旋回する)が語源とされ,抱き合った男女の1対が足を滑らせるようなステップで旋回し,同時にフロアを円形に回るのが特徴である。類似した舞曲は古くから認められるが,直接の前身はオーストリアの農民舞曲レントラーLändlerと考えられる。

 ウィーンで18世紀末にワルツが宮廷舞踊にとってかわった事実は,パートナーが直接抱き合うという民衆性とともに,舞踊史上象徴的な意味をもつ。レントラーが洗練を加えて,ワルツの性格が明瞭になったのは,ウィーン会議(1814-15)を契機にワルツが全ヨーロッパに普及しはじめた時期であり,例えばウェーバーのピアノ独奏曲《舞踏への勧誘》(1819)はその典型といえる。数曲連鎖したワルツに序奏と後奏のついた形式,変化に富んだ全曲の統一性,低音の1打に二つの和音が続く伴奏型(いわゆる〈ズン・チャッ・チャ〉),かなり急速なテンポなどである。こうした形態はランナーとヨハン・シュトラウス(父)によって磨きあげられ,〈ワルツ王〉と呼ばれた息子のヨハン・シュトラウスは,舞踏用ワルツを鑑賞用の芸術音楽に劣らぬ水準にまで高めた。こうした〈ウィンナ・ワルツ〉のほかにもさまざまな変種があり,フランスのバルスvalse,アメリカのボストン・ワルツが代表的である。ワルツの全盛時代は20世紀初めに新大陸のタンゴやジャズが流入したことで終わった。

 19世紀を代表する舞曲だったため,ほとんどの作曲家がワルツを手がけている。舞踏用ワルツのほか,純然たる芸術作品としても,ピアノ曲,交響曲楽章,声楽曲など無数の例がある。オペラやバレエなどの舞台作品には欠かせず,ことにオペレッタはワルツの高揚のなかで大団円となるのが普通である。大衆歌曲の分野でも愛用され,ドイツにはワルツァーリートがあり,フランスのシャンソンの多くはワルツのリズムで書かれている。20世紀の映画音楽や現代音楽では〈古きよき時代〉への郷愁や反発を意味する用法が多い。

 日本でのワルツの歴史は,外国人居留地や少数の海外渡航者を別にすれば,明治時代の洋楽流入とともに始まる。鹿鳴館の開館(1883)と東京市中音楽隊の開業(1887)をもって本格的な普及が始まり,とくに行進曲やポルカとともに,ワルツをレパートリーの中心に置いた後者は活発に出張演奏を展開し,日清戦争から日露戦争の間には全国に類似の団体を生み出した(ジンタ)。3拍子系のリズムの伝統が乏しいとされる日本でワルツが急速に受け入れられたことは,1900年代に早くもワルツのリズムによる流行歌が生まれたことに示される。《美しき天然》(田中穂積(1855-1905)作曲・武島羽衣作詞,1900年ころ),《銀波》(外国曲?,1900年ころ),《ダニューブ河の漣(さざなみ)》(I. イワノビチの曲に田村貞一が作詞,1902年発表)らがそれで,いずれも感傷的な遅いテンポのワルツである。とりわけ佐世保の海軍軍楽隊長であった田中が作曲した《美しき天然》は,伝統的な旋律構成と西洋的な唱歌形式を合わせたもので,サーカスなどでも使われて日本のワルツの原像をなすものといえるだろう。
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百科事典マイペディア 「ワルツ」の意味・わかりやすい解説

ワルツ

円舞曲ともいう。男女1対によって踊られる3拍子の舞曲。ドイツ語でWalzer。19世紀後半に流行。オーストリアの民族舞踊レントラーが起源で,J.シュトラウス父子によってウィーン・ワルツ(ウィンナ・ワルツ)が完成した。ショパンの作品のようなピアノ小品も数多く,また交響曲の楽章に用いられることもある。
→関連項目社交ダンスシュトラウス

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世界大百科事典(旧版)内のワルツの言及

【ウィンナ・ワルツ】より

ワルツのタイプの一つで,主として19世紀にウィーンを中心にヨーロッパで好まれたダンス用の音楽またはその音楽による踊りのこと。3/4拍子または3/8拍子で書かれる。…

【社交ダンス】より

…宮廷では,ゆったりとした音楽による,踊りの規則のやかましいものへと変化して,優雅なメヌエット,ガボット,カドリーユなどが生まれた。フランス革命後,宮廷での儀式的なものより庶民的な踊りが好まれるようになり,古くからオーストリアの山岳地方で行われていた舞踊レントラーLändlerがしだいにワルツに発展,ウィーンを中心にヨーロッパ全域へと爆発的な流行をもたらした。ワルツ王J.シュトラウスは,〈ウィンナ・ワルツ〉の名曲を数多く作ったが,男女が一対に組んで旋回をともないながら滑るように踊るワルツのステップに,今日の社交ダンスの起源をみることができる。…

※「ワルツ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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