山川 世界史小辞典 改訂新版 「ヴィクトリア女王」の解説
ヴィクトリア女王(ヴィクトリアじょおう)
Victoria
1819~1901(在位1837~1901)
イギリス,ハノーヴァー朝最後の女王。伯父ウィリアム4世のあとを継いで18歳で即位。メルバーン首相の影響下に君主としての教育を受け,1840年いとこのアルバートと結婚。しだいに立憲君主としての自覚を深め,堅実な家庭生活の場としての王室は,国民の敬愛の的になった。1851年夫を中心とする尽力により世界最初のロンドン万国博覧会が開かれ,世界の最先進国としてのイギリスの立場が誇示された。61年夫の急死によって打撃を受けた女王は,約10年間公務の場から遠ざかったが,復帰後は誠実に女王としての職務に励み,87年即位50周年記念式典,97年即位60年記念式典が祝われた。9人の子供をヨーロッパの諸国の王室と縁組させたため,女王はさながらヨーロッパ王室の女家長の観を呈した。立憲君主でありながら,政治家に対する好悪を表し,好意を寄せた政治家はメルバーン,ディズレーリ,反対に嫌ったのはパーマストン,グラッドストンであった。その64年に及ぶ治世の前半は「世界の工場」としてのイギリスの最盛期にあたり,後半は後進諸国の追い上げを受けたものの,イギリス帝国の威容を維持することができた。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報