山川 世界史小辞典 改訂新版 「ヴェルサイユ条約」の解説
ヴェルサイユ条約(ヴェルサイユじょうやく)
第一次世界大戦を終わらせ,連合国と敗戦国間で結ばれた諸講和の条約のなかでも中心的な位置を占める対ドイツ講和条約(15編440条からなる)。フランスのヴェルサイユ宮殿「鏡の間」で,1919年6月28日に調印された。これに先行して同年1月18日から敗戦国およびロシアぬきでパリ講和会議が開かれ,5月条約草案がドイツ代表に示された。ドイツ国内では憤激や動揺が広がり,バウアー内閣は総辞職した。結局,条約案を受け入れざるをえなかったが,ドイツ側では条約と呼ばず「強制的に書き取らされたもの(ディクタート)」という怨恨感情の強い呼称が一般化し,その後の対外政策にも影響を及ぼした。20年1月10日発効(中国は署名拒否。アメリカもこれとは別の講和を21年8月締結)。第1編に国際連盟規約を掲げているように,単なる講和条約ではなく,第一次世界大戦後の平和の再構築,国際秩序の再編もめざしていた。領土改定,ドイツの軍備制限,賠償義務,戦争責任追及のほかに,国際労働機関(ILO)の常設をも含むものであった。この条約によってドイツは海外植民地をすべて失い,フランスにアルザス・ロレーヌを返還した。なかでも対ドイツ賠償取立ての決定は以後の国際情勢に最も重大な意味を持った。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報