日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルクイン」の意味・わかりやすい解説
アルクイン
あるくいん
Alcuin
(735ころ―804)
ヨーロッパ中世初期の人文学者。イギリスのヨーク出身。ラテン名はアルクイヌスFlaccus Albinus Alcuinus。781年カール大帝に招かれて大陸に渡り、宮廷学校や文庫の経営にあたり、フランク王国の教育・宗教行政の整備に尽力した。当時イギリスの僧院に保存されていた古典文化の遺産を大陸に伝え、もって古典文化、宗教、政治の緊密かつ緊張ある結合を特色とするヨーロッパ中世文化の基磯を定めるのに貢献した。著作は、文法、修辞学、弁証法、幾何学、算術、天文学、音楽など古代学芸における自由七科の手引書をはじめ、『魂の本質について』の哲学的著作、三位(さんみ)一体についての神学的著作など多岐にわたり、いずれも平明で高い学問的水準を示している。数多い書簡も当時の歴史的状況を知る資料として貴重である。
[坂口ふみ 2015年1月20日]