三十帖冊子(読み)さんじゅうじょうさっし

精選版 日本国語大辞典 「三十帖冊子」の意味・読み・例文・類語

さんじゅうじょうさっしサンジフデフサッシ【三十帖冊子】

  1. 弘法大師空海が唐から帰国する時にもたらした密教秘籍書写した小型の冊子粘葉(でっちょう)とじのもので、帖数が三〇帖あるところから呼び慣らわされた名。空海自身の書写もあるが、多くは中国人の書写になる。はじめ東寺に納められたが、現在は京都仁和寺所蔵。この書を納める箱(宝相華迦陵頻伽蒔絵)は優秀な工芸品として冊子そのものと並んで尊重されている。国宝

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百科事典マイペディア 「三十帖冊子」の意味・わかりやすい解説

三十帖冊子【さんじゅうじょうさっし】

空海が唐より帰国の際,随身秘蔵してきた経文の冊子本。書体は楷(かい)・行・草まちまちで,筆写には空海,橘逸勢(はやなり)のほか,唐の写経生も参加したと推定される。もと38帖あったが,東寺高野山などを転々とするうちに散逸し,現在30帖が仁和寺(にんなじ)に伝わる。冊子を納める黒漆塗の箱は金地の研出蒔絵(とぎだしまきえ)が施されており,現存蒔絵中制作年代(919年)の明確な最古遺品

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三十帖冊子」の意味・わかりやすい解説

三十帖冊子
さんじゅうじょうさっし

空海が入唐中 (804~806) ,長安において写経生らを集めて書写させ,みずからも筆をとって持帰った経典の冊子。初め 38帖あったが失われ,30帖現存するのでこの名がある。蒔絵の冊子箱とともに国宝。仁和寺蔵。真言宗秘宝とされている。紙本,製本は粘葉装 (でっちょうそう) 。

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世界大百科事典(旧版)内の三十帖冊子の言及

【空海】より

金剛峯寺【和多 秀乗】
[空海の書]
 空海は日本書道界の祖として重視され,嵯峨天皇とともに二聖と呼ばれ,また橘逸勢を加えて三筆とも呼ばれる。世に空海筆と称されるものは数多いが,確実に彼の筆と認められるのは《風信帖》《灌頂歴名》《真言七祖像賛》《聾瞽指帰(ろうこしいき)》《金剛般若経開題》《大日経開題》《三十帖冊子》などである。《風信帖》は空海から最澄にあてた書状で三通あり,いずれも812,3年ころのもの。…

【橘逸勢】より

…手迹見に在り〉とあり,特に隷書に秀でていたとされ,勅を奉じて平安宮内裏北面の安嘉(あんか),偉鑒(いかん),達智(たつち)の三門の額を書いたという。また《伊都内親王願文》《興福寺南円堂銅灯台扉銘》および《三十帖冊子》中の一部も彼の筆跡と伝える。《伊都内親王願文》は興福寺東院西堂の香灯読経料として,墾田ほかを寄進した際の内親王の願文であるが,江戸時代の初期に藤木敦直(1582‐1649)が逸勢の筆と称してから逸勢筆と伝えられるもので,特に根拠はない。…

【粘葉装】より

…中国の書物は用紙の表面のみを印刷,裏が白であるのに対し,日本では両面印刷が特徴である。写本としては空海筆《三十帖冊子》(仁和寺蔵,国宝)が現存最古のものである。装丁【大内田 貞郎】。…

※「三十帖冊子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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