粘葉装(読み)でっちょうそう

精選版 日本国語大辞典 「粘葉装」の意味・読み・例文・類語

でっちょう‐そう デツエフサウ【粘葉装】

〘名〙 (「でっちょう」は「でつよう」の連声。「でつ」は「粘」の漢音の一つ) 書物装丁法の一つ。印刷または書写した一枚の紙の文字面内側中央から二つ折りとし、その折り目を並べ重ねて、折り目の外側に糊をつけ、各葉を接着させて一冊とする。料紙表面にのみ文字の書かれたものを帖にしたときは白い頁ができるが、後にはこの装丁を予期して、料紙を二つ折りにして書くことにもなった。これらをその開いた形から胡蝶装ともいう。粘葉

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デジタル大辞泉 「粘葉装」の意味・読み・例文・類語

でっちょう‐そう〔デツエフサウ〕【粘葉装】

《「でっちょう」は「でつよう」の連声れんじょう和装本じ方の一。用紙を1枚ごとに二つ折りにし、各紙の折り目の外側1センチ程度にのりを付けてり重ね、表紙を付けたもの。胡蝶こちょう装。

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改訂新版 世界大百科事典 「粘葉装」の意味・わかりやすい解説

粘葉装 (でっちょうそう)

書物装丁の一つ。用紙を一枚ごとに二つ折して,折り目(外側)に沿って5mm幅ほど,のり付けして重ねて貼り合わせ,表紙をつけて冊子としたもの。のりを用いて各葉をとじつけるので〈粘葉〉といい,それ以前の折本(おりほん)や旋風葉に代わって盛んとなった。表紙には,背の部分を紙や布(絹)で包み,前後別々に表紙を添えるものと,または一枚の表紙で前後を包み,背の部分をのり付けにした,包み表紙がある。のり付けされた丁を見開くと,チョウが羽根を広げた形になるので,中国では蝴蝶装と呼ぶ。宋時代の刊本装丁の代表的なものである。刊行当時そのままの原装本はほとんど残っていないが,天理図書館所蔵の《通典》(南宋版,重要文化財)は原装本のおもかげを伝えるもの。日本の例では,高野版《十住心論》(1255刊),浄土教版《西方要決釈疑通規》(鎌倉中期刊)などがある。中国の書物は用紙の表面のみを印刷,裏が白であるのに対し,日本では両面印刷が特徴である。写本としては空海筆《三十帖冊子》(仁和寺蔵,国宝)が現存最古のものである。
装丁
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図書館情報学用語辞典 第5版 「粘葉装」の解説

粘葉装

「でっちょうそう」と読む.和漢書の装丁法の一種で,印刷または筆写された紙を,字面を内側にして二つ折りし,各紙の折目の外側の背に近い部分に糊を付けて相互に密着させていき,それに表紙を加えたもの.表紙は前後を続けて1枚で包んだもの,また,背のみ別紙や絹で包み,前後各別に表紙を加えたものもある.糸も紐も用いずに糊だけで仕上げるのが特徴である.粘葉装では字面のある見開き2ページの次には,白紙の部分が見開き2ページ分くることになる.中国では宋代の代表的装丁法である.日本では平安時代から鎌倉時代の写本や版本に見られるが,中国に比べて厚手の紙が使用されるので,紙の表裏ともに書写または印刷されることが多い.折りの背に近い部分で紙が相互に貼り合わされているため,本を開くとき蝶が羽を開いたような形になるので,この装丁法を中国では胡蝶装と呼ぶ.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「粘葉装」の意味・わかりやすい解説

粘葉装
でっちょうそう

冊子本の装丁法の一種。装丁しようとする紙を全部2つ折りとし,折り目の外側に幅狭く糊をつけ,この部分で順次張り重ねていく方法。冊子を開いたとき,折り目から全部開けるページと,糊しろのため完全には開けないページとが交互に出てくる。 (→胡蝶装 )

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百科事典マイペディア 「粘葉装」の意味・わかりやすい解説

粘葉装【でっちょうそう】

胡蝶装(こちょうそう)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「粘葉装」の意味・わかりやすい解説

粘葉装
でっちょうそう

胡蝶装

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世界大百科事典(旧版)内の粘葉装の言及

【製本】より

…これは長い間に折り目が切れやすいので,紙葉を重ねて,折り目に糊入れし,表紙でくるむ方法が案出された。ひろげると蝶のはねのようなかっこうをしたので〈胡蝶(こちよう)装〉と呼ばれ,また糊ではりつけたので〈粘葉(でつちよう)装〉ともいわれた。この方法は唐代にもおこなわれ,宋代にはいり,印刷術が盛んになるにつれてその使用も増大していった。…

※「粘葉装」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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