三十番神(読み)サンジュウバンジン

デジタル大辞泉 「三十番神」の意味・読み・例文・類語

さんじゅう‐ばんじん〔サンジフ‐〕【三十番神】

天台宗日蓮宗で、法華経守護する神。本地垂迹ほんじすいじゃく説に基づく。1か月の30日間、1日一体ずつ祭る。

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精選版 日本国語大辞典 「三十番神」の意味・読み・例文・類語

さんじゅうばん‐じんサンジフ‥【三十番神】

  1. 一か月三〇日間を毎日交替して如法経を守護する三〇の神々。一般には法華経守護神として著名。はじめ天台宗で、のちに日蓮宗で信仰されたもので、本地垂迹説(すいじゃくせつ)によった考え方。第一日目から順に、熱田諏訪広田、気比、気多、鹿島北野、江文、貴船、伊勢、八幡、賀茂、松尾、大原野、春日、平野、大比叡、小比叡、聖真子、客人、八王子、稲荷住吉祇園赤山建部三上、兵主、苗鹿、吉備津の各神をあてる。
    1. [初出の実例]「惣じては七千余座の神、殊には三十番神、朝家を守り奉り給ふ」(出典:保元物語(1220頃か)上)

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改訂新版 世界大百科事典 「三十番神」の意味・わかりやすい解説

三十番神 (さんじゅうばんじん)

国家人民を1ヵ月30日結番して守護すると信じられる30種の善神をいう。その種類には(1)天地擁護,(2)内侍所守護,(3)王城守護,(4)吾国守護,(5)禁闕きんけつ)守護,(6)法華守護,(7)如法守護,(8)法華経守護,(9)仁王経守護,(10)如法経守護の10種がある。この三十番神が守護するという思想のはじめは《灌頂(かんぢよう)経》によるが,系譜的には,(1)~(3)の番神は《仁王般若波羅蜜経》護国品の〈此の諸経の鬼神は汝の国土を守護す〉によって(9)の仁王経守護神を祭った南楽坊良正の影響下に神道家が立てたものである。同じく神道家の所伝である(4),両部神道・神道家の所伝の(5),日蓮が勧請した(8)および南楽坊良正による(7),円仁が入唐以前に勧請した(10)の三十番神などは,山門鎮守として(6)の法華守護を祭祀した最澄の教説を継承してたてられた信仰である。とりわけ,(6)(7)(10)の神仏融合思想を自覚的に受容して(8)の法華経守護の番神=法華神道を提唱したのが日蓮であり,彼はその教えを,日本国に正法=法華経が行われないために国土を守護すべき善神は天上に去ってしまい,さまざまの災難が競い起こる,つまり〈神天上〉と理解したうえで構築した。この教えを日像が京都の神祇信仰の現実を踏まえて,いよいよ法華神道として弘通していった。さらに室町期以後,日澄,日修,日珖などがその神道的な教学の整備につとめるに及んで,鬼子母神(きしもじん),十羅刹女(じゆうらせつによ)信仰と並ぶ日蓮宗内の守護神信仰として定着することとなった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三十番神」の意味・わかりやすい解説

三十番神
さんじゅうばんじん

わが国の著名な30神が、1か月30日間を毎日交番で法華経(ほけきょう)を守護するということ、また、その30神のこと。略して番神ともいう。このような結番思想は、古代中国、五代のころに五祖山(ごそざん)戒禅師が制定した三十日仏名(さんじゅうにちぶつみょう)におこり、それがわが国の天台宗に取り入れられ、のちに日蓮(にちれん)宗において盛んとなったといわれる。『諸神記』に天地擁護をはじめ、7種の番神を掲げてあるが、とりわけ法華守護は一般に知られており、第1日目から順に、熱田(あつた)、諏訪(すわ)、広田、気比(けひ)、気多(けた)、鹿島(かしま)、北野、江文(えぶみ)、貴船(きぶね)、伊勢(いせ)、八幡(はちまん)、賀茂(かも)、松尾(まつのお)、大原野、春日(かすが)、平野(ひらの)、大比叡(おおびえ)、小比叡(おびえ)、聖真子(しょうじんじ)、客人(きゃくじん)、八王子、稲荷(いなり)、住吉(すみよし)、祇園(ぎおん)、赤山(せきざん)、建部(たけべ)、三上(みかみ)、兵主(ひょうず)、苗鹿(のうか)、吉備津(きびつ)の各神をあてる。これらの神は絵像や彫像として日蓮宗寺院の番神堂などに祭られ、なかには鎌倉時代末期までさかのぼる絵像もある。

[三橋 健]

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世界大百科事典(旧版)内の三十番神の言及

【番神信仰】より

…番神は三十番神の略称。日本国中にまつる30の神々が,1ヵ月30日の間,毎日,順番に国家と人々を守るという信仰である。…

※「三十番神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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