改訂新版 世界大百科事典 「三大階級」の意味・わかりやすい解説
三大階級 (さんだいかいきゅう)
18世紀の重農主義者F.ケネーは,農業を中心とする当時の社会が生産階級(農民),地主・支配階級,不生産階級(商工業者)の3階級によって構成されるとみなし,それらの間の取引を分析することによって生産物および所得の社会的循環を解明する《経済表》を著した。全経済体系の活動を諸階級間の相互連関として包括的にとらえるというこの発想は,その後K.マルクスの再生産表式,L.ワルラスの一般均衡理論,W.W.レオンチエフの産業連関分析(〈産業連関表〉の項参照)へと受けつがれていった。
資本主義経済が本格的に成立した19世紀の経済学者マルクスは《資本論》において,資本主義の根幹は資本と賃労働の基本的対立にあり,純粋にとらえた資本主義社会は資本家,賃労働者,土地所有者の三大階級によって構成され,年々生み出される価値生産物(いわゆる国民所得)は利潤,賃金,地代というかたちでそれぞれの階級に分配されると説いた。通常三大階級と呼ばれるのはこのマルクスの古典的規定のことをさす。
しかし,資本主義経済および民主主義的社会システムの高度な発展とともに,階級間の相互浸透,土地所有者機能の相対的低下,さらにテクノストラクチャーをはじめとするいわゆる中間層の急増など新たな状況が生じてきた。現代では先進国を中心に階級構造の流動化,希薄化が著しく進んでおり,とくに日本などは階級区分が最も希薄な社会であるといわれている。
執筆者:木村 一朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報