マルクスが資本制経済の再生産の仕組みを,(1)生産部門を生産手段生産部門(第1部門)と消費手段生産部門(第2部門)に分割し,(2)各部門の生産物価値(W)を不変資本(C)(不変資本・可変資本),可変資本(V)および剰余価値(M)からなるものとして表示したのが再生産表式である。再生産が単純再生産と拡大再生産に分かれるのに対応して,再生産表式も単純再生産表式と拡大再生産表式とに分かれる。
単純再生産は生産規模不変の再生産であって,そこでは剰余価値はすべて資本家の個人的消費にあてられ,蓄積はゼロである。単純再生産表式はつぎのように表される。添字1,2は生産部門を表す。
C1+V1+M1=W1
C2+V2+M2=W2
ここにおいて需給が均衡するためには第1部門についてはC1+V1+M1=C1+C2,第2部門についてはC2+V2+M2=V1+V2+M1+M2でなければならない。両者から単純再生産の均衡条件として,V1+M1=C2が導かれる。
拡大再生産は生産規模が拡大する再生産であって,そのためにはそれを可能ならしめる余剰生産手段(⊿W1=W1-(C1+C2))が生産されていなければならない。そして蓄積が行われるから剰余価値はつぎのように分割される。M=Mk+Ma,Ma=Mac+Mav。ただし,Mkは資本家の個人的消費部分,Mac,Mavは蓄積(Ma)のうちの追加的不変資本と追加的可変資本をそれぞれ表す。拡大再生産表式は以下のごとくである。
両部門の需給均衡条件は,となり,これを若干変形するととなる。このことは余剰生産手段の価値(⊿W1)が両部門の追加的不変資本として過不足なく用いられることが拡大再生産の均衡条件であることを示している。
マルクスの拡大再生産表式は,マルクス経済学の分野では恐慌論や計画経済のツールとして適用され,近代経済学の分野では投入産出分析(〈産業連関表〉の項参照)や成長論に大きな影響を与えた。
→再生産
執筆者:高須賀 義博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…彼の試みは,その後の経済学を貫く思潮の一つとなり,現代にまで受け継がれている。とりわけ経済表として1枚の図表に経済活動の全貌を集約して表現しようとした彼の着想は,マルクスの再生産表式やレオンチエフの産業連関表として結実し,経済学上有力な分析用具を提供する結果となった。 現代の国民経済の循環構造を具体的にとらえる手法としては,上記の産業連関表のほかに,国民経済計算と資金循環表(マネー・フロー表)があげられる。…
…経済学上の著作活動は,ディドロとダランベールの編集した《アンシクロペディー(百科全書)》に寄稿した〈借地農論〉(1756)と〈穀物論〉(1757)にはじまる。とくに〈経済表〉は,ケネーの経済思想の核心をなしており,後世の経済学者から経済循環図式,再生産表式,産業連関表の原型であると高く評価された。ケネーは,農業だけが〈純生産物produit net〉を産出し,製造業は土地の生産物に加工し,製品に仕上げるだけだから,資本その他の資源をできるだけ多く農業に配分することが,当時のフランス経済と財政の再建に必要だと考えた。…
…こうして貨幣の投下と回収を通ずる資本価値の循環運動のなかに,労働生産物の生産財および消費財としての分配が行われ,それによって資本と賃労働との間の階級関係も再生産されることになる。 こうした資本主義の再生産を〈社会的総資本の流通〉に即して考察し,流通という媒介運動のなかに内包されている再生産の条件を明らかにしたのが,K.マルクスの再生産表式Schema der Reproduktionである。マルクスは,総商品の価値構成と素材構成との相互の関連のなかに再生産の基本条件を見いだすため,単純再生産表式と拡大再生産表式の二つの再生産表式を作成することになったが,これについては〈再生産表式〉の項を参照されたい。…
…第2は,資本の回転。第3は,社会的総資本の再生産(循環)を媒介する総商品資本の流通の構造,いわゆる再生産表式の問題,である。
[流通費の問題――第1編]
ここでは生産費に対する流通費のことが語られる。…
※「再生産表式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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