改訂新版 世界大百科事典 「三帖和讃」の意味・わかりやすい解説
三帖和讃 (さんじょうわさん)
親鸞が作った《浄土和讃》《浄土高僧和讃》《正像末法(しようぞうまつぽう)和讃》の3部の総称。《浄土和讃》116首は,曇鸞(どんらん)の《讃阿弥陀仏偈(さんあみだぶつげ)》と浄土三部経などによって阿弥陀如来を讃嘆し,《浄土高僧和讃》117首は,竜樹など7人の高僧をたたえる。親鸞76歳の1248年(宝治2)に初稿本ができ上がっている。《正像末法和讃》は85歳ころの製作で,末法時における阿弥陀の悲願を讃嘆した91首を主体とする。親鸞の思想を端的明快に吐露したものとして,あるいは文学史上和讃の最高傑作として高く評価される。三重県津市専修(せんじゆ)寺に,親鸞が校閲加筆したとみられる《浄土和讃》と《浄土高僧和讃》,親鸞自筆草稿の《正像末法和讃》がある。
執筆者:平松 令三
声明曲
《三帖和讃》の現行曲の作曲者は不明。所収の詞章は,七五調4行を1首とする今様形式で,各編100首を超えるが,法要には,その中から3首とか6首とかを抜き出して唱え,その前後や中間に念仏や回向(えこう)を配して首尾を整える。またさらにその前に《正信偈(しようしんげ)》などを節を付けて唱える形式の法要も多い。この和讃はもっぱら浄土真宗各派で用いるが,詞章が同じでも曲節が派ごとに違っているし,同一派に繁簡数種の曲節があることもあって,かなり多岐にわたる様相をみせている。
執筆者:横道 万里雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報