三枝祭(読み)さいぐさまつり

精選版 日本国語大辞典 「三枝祭」の意味・読み・例文・類語

さいぐさ‐まつり【三枝祭】

〘名〙 奈良市率川(いさかわ)神社で六月一七日行なわれる祭礼。一本の茎に三枝の花をつけたユリ本社大神(おおみわ)神社に献じるところからこの名がある。もと大宝令によれば、例年四月、酒樽に三枝の花を飾ったとあるが早く廃絶されたため、このときの三枝の花がどんな植物であったか未詳である。今の祭は明治一〇年(一八七七)に復活されたもの。《季・夏》 〔延喜式(927)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「三枝祭」の意味・わかりやすい解説

三枝祭 (さいぐさのまつり)

古代律令祭祀の一つで,孟夏(陰暦4月)の祭。当時の令の解説書《令義解》によれば,〈率川社(いさがわのやしろ)の祭なり。三枝花を以て,酒罇(みか)に飾りて祭る。故に三枝という〉という。《延喜式》の四時祭の規定では,小祀とされた。三枝花は,その枝が三岐に分かれるところからの命名で,一説に百合花という。率川社(率川神社)は,奈良県桜井市に鎮座する大神(おおみわ)神社の摂社で,奈良市内にまつる。この祭は,平安末ごろには衰退したものと思われ,《公事根源》では,2月と11月の項に率川祭が記され,三枝祭との混同さえうかがえる。現在の祭典は,明治時代に率川社が興福寺の管理から離れた後,1881年6月17日に再興されたものである。その後,春日祭式を参考にして,清酒,濁酒を盛る罇(さかだる)を三輪山中より採取したヤマユリの花をもって飾り,神饌として供えるようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三枝祭」の意味・わかりやすい解説

三枝祭
さいくさのまつり

大神(おおみわ)神社の摂社率川(いさがわ)神社(奈良市本子守町)で毎年6月17日に行われる祭儀。一名百合(ゆり)祭。神祇令(じんぎりょう)にも記され、起源の古い祭儀であるが、平安中期以降廃絶、明治年間に復興した。本社のある三輪(みわ)山に咲いたユリの花(三枝の花)で酒樽(さかだる)を飾り、献ずることから、この祭名となったという。

[鎌田純一]


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