古代律令祭祀の一つで,孟夏(陰暦4月)の祭。当時の令の解説書《令義解》によれば,〈率川社(いさがわのやしろ)の祭なり。三枝花を以て,酒罇(みか)に飾りて祭る。故に三枝という〉という。《延喜式》の四時祭の規定では,小祀とされた。三枝花は,その枝が三岐に分かれるところからの命名で,一説に百合花という。率川社(率川神社)は,奈良県桜井市に鎮座する大神(おおみわ)神社の摂社で,奈良市内にまつる。この祭は,平安末ごろには衰退したものと思われ,《公事根源》では,2月と11月の項に率川祭が記され,三枝祭との混同さえうかがえる。現在の祭典は,明治時代に率川社が興福寺の管理から離れた後,1881年6月17日に再興されたものである。その後,春日祭式を参考にして,清酒,濁酒を盛る罇(さかだる)を三輪山中より採取したヤマユリの花をもって飾り,神饌として供えるようになった。
執筆者:茂木 貞純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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