精選版 日本国語大辞典 「三里の灸」の意味・読み・例文・類語
さんり【三里】 の 灸(きゅう)
- 三里②に灸をすえること。また、その灸。
- [初出の実例]「三里之灸徳尤妙」(出典:蔗軒日録‐文明一八年(1486)五月三〇日)
灸のなかでも代表的なもので、古来から長寿の灸、または頭寒足熱(ずかんそくねつ)の実をあげる養生(ようじょう)灸として知られる。三里とは経穴(けいけつ)(つぼ)の名称である。三里という名がつけられている経穴は手と足にあり、それぞれ手の三里、足の三里とよばれている。とりわけ足の三里は1人ですえられるうえ、効果もあるところから、とくに普及し、単に三里といえば足の三里をさすようになっている。三里の灸は胃腸の働きをよくしたり、全身状態の調整を図るほか、直接的に足を軽くしたり、じょうぶにするということから、昔は旅のときなどに毎朝すえたという。民間療法としての三里の灸は、高血圧や脳卒中の後遺症のほか、目、耳、鼻などの症状を緩和し、これらの予防にもなるといわれるが、おもに下肢の神経痛、関節痛、麻痺(まひ)、脚気(かっけ)などの治療に用いられる。
東洋医学的には、胃経(いけい)(胃の働きと関係のある経絡(けいらく))に属する経穴の灸であるため、胃の機能調整にも有効である。また、副腎(ふくじん)皮質の働きをよくし、各種ホルモンの分泌にも作用する。また、近年は胃部のX線写真によって、三里への刺針が胃の蠕動(ぜんどう)運動を促進することも確認されたほか、高血圧症に対して降圧作用をもたらすことも報告されている。
[井上雅文]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報