家庭医学館 「上大静脈症候群」の解説
じょうだいじょうみゃくしょうこうぐん【上大静脈症候群 Superior Vena Cava Syndrome】
頭部、頸部(けいぶ)、上肢(じょうし)から血液を運んでくる静脈は、胸骨(きょうこつ)の後ろにある縦隔(じゅうかく)という場所で1本の太い静脈(上大静脈(じょうだいじょうみゃく))となって心臓に流れ込みます。この上大静脈が、なんらかの原因で外部から圧迫されたり、静脈内に血栓(けっせん)(血液のかたまり)が形成されて内腔(ないくう)がふさがれると、上半身からの静脈血の還流が障害され、上半身、とくに頸部から顔面にかけて、うっ血(けつ)や腫(は)れを生じます。これを上大静脈症候群といいます。
[原因]
肺がんなど、胸部の悪性腫瘍(あくせいしゅよう)(がん)によるものがもっとも多く、約80%を占めています。
ほかに、胸部大動脈瘤(きょうぶだいどうみゃくりゅう)の圧迫によるものがあります。また、カテーテルを長期間静脈内に留置(留置カテーテル)したために、静脈内に血栓ができてしまうケースも増えています。
[治療]
悪性腫瘍が原因の場合は、対症療法が中心となります。できるだけベッド上にからだを起こして座るようにして(坐位(ざい))、静脈血を還流しやすくします。
外科的には、血栓を取り出す手術やバイパス形成術が行なわれることもあります。