六訂版 家庭医学大全科 「上大静脈症候群」の解説
上大静脈症候群
じょうだいじょうみゃくしょうこうぐん
Superior vena cava syndrome
(循環器の病気)
どんな病気か
心臓にもどってくる静脈は2本あります。ひとつは頭や腕の静脈血を右心房にもどす上大静脈、もうひとつは足や内臓の静脈血を右心房にもどす
その一方で、心臓は一所懸命に血液を動脈に送り出しているので、還流障害があると帰り先のなくなった血液は、頭や腕にたまるばかりとなり(うっ血)、やがて頭や腕がむくんできます(浮腫)。
原因は何か
近年、この病気が注目されるようになってきたのは、日本における肺(はい)がんの増加と関係しています。この病気の原因の75~80%は肺がんで、逆に肺がんの2~3%にこの症状が現れるといわれています。そのほかに、
症状の現れ方
静脈の還流障害なので、症状は先に述べたような頭や腕のむくみですが、閉塞の場所、速度、程度、
検査と診断
静脈の閉塞があると、腕の静脈圧が上昇してきます。腕で静脈圧を測ったり、静脈造影を行って、
治療の方法
上大静脈症候群はあくまでも症状から名付けられた病態名なので、その原疾患の治療を優先します。たとえば、良性腫瘍であれば手術による摘出が可能ですし、悪性リンパ腫ならば放射線治療を行うことになります。ただし、肺がんが原因で上大静脈症候群が起こった場合にはがんが進行しており、手術による完全切除ができない例がほとんどです。
病気に気づいたらどうする
上半身のむくみに気づいたら、そのほかの症状がなくても、肺がん、縦隔腫瘍、胸部大動脈瘤などを考えて、内科の受診が必要です。
丸山 義明
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報