翻訳|reflux
蒸留に際し,塔底にある缶またはリボイラーでの加熱によって発生した蒸気は蒸留塔内を上昇し,塔頂から出てくる蒸気はコンデンサー(凝縮器)で凝縮されて液となり,その一部は製品として留出されるが,一部は再び塔頂近くの塔内へ戻される。このように蒸留塔の内部では,上方から液が下降し,下方から蒸気が上昇して気-液接触が行われる。この塔へ戻される液(還流液)のことを単に還流またはリフラックスといい,還流の量Lと留出液の量Dとの比L/Dを還流比reflux ratioと呼ぶ。コンデンサーには全縮器と分縮器とがあって,全縮器では塔頂からの蒸気はすべて凝縮されて液となるが,分縮器では一部は蒸気またはガスのまま取り出され,一部が液化されて還流となる。実験室の蒸留塔などでは塔頂の塔内にコンデンサーを設置する場合もある。一般に還流比が大きいほど分離性能が大となり,還流比が無限大の場合を全還流という。また還流比がある値よりも小さくなると,望む分離ができなくなり,このような値を最小還流比と呼んでいる。
→蒸留
執筆者:平田 光穂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
蒸留において,一度精留塔の塔頂より出た蒸気が,分縮器あるいは全縮器によって冷却凝縮され,液となってふたたび精留塔の塔頂に戻されることをいう.発生した蒸気の全部を凝縮させて戻すとき全還流というが,このときは留出液を得ることができないので,実際の操業では行われない.しかし,運転開始のとき,早く定常状態にするため,しばしば全還流運転が利用されている.凝縮した液の一部を還流し,残りを留出液として系の外に取り出して製品とする.これを部分還流という.還流量の留出量に対する比を還流比といい,この値は0から∞まで変化させることができる.また,還流比をしだいに小さくすると,望む留出濃度を得るためには,無限の段数(理論段数)が必要になる.このときの還流比を最小還流比といい,精留塔の設計上,一つの重要な値とされている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… そこで,次にくふうされたのが図のbのような回分蒸留塔である。下方のフラスコまたは缶にやはり100gの水溶液を入れて加熱し,塔頂から出てきた蒸気を凝縮させて,それを再び塔頂に戻す(還流)と,その液は温度が低いので,下から上ってくる蒸気と接触すると蒸気の一部を凝縮させる。その際重い成分(この場合は水)をより多く凝縮させるので,蒸気の凝縮しない部分は軽い成分(この場合メチルアルコール)に富むことになり,このような繰返しによって塔頂にメチルアルコールが集まってくる。…
※「還流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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