還流(読み)カンリュウ(その他表記)reflux

翻訳|reflux

デジタル大辞泉 「還流」の意味・読み・例文・類語

かん‐りゅう〔クワンリウ〕【還流】

蒸気となったものを冷却し、凝結させて再び液体としてもとに戻すこと。
(比喩的に)物事がもとの方向へ戻ること。「労働者地方還流する」

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精選版 日本国語大辞典 「還流」の意味・読み・例文・類語

かん‐りゅうクヮンリウ【還流】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 水や空気の流れなどが、方向を転じてもときた方へ流れること。また、比喩的に、物事がもときた方へもどることをもいう。
    1. [初出の実例]「この還流する暖流に囲まれたのが藻海である」(出典:海底旅行(1929)〈木村信児訳〉二)
    2. 「それは村へ還流することの少い教育であったかも知れないが、それでも農村を多少とも文化的にしたはずだ」(出典:日本の土(1955)〈読売新聞社会部〉白い手の地主の悲哀)
  3. 蒸気となったものを冷却し、凝結させて再び液体としてもとに戻すこと。

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改訂新版 世界大百科事典 「還流」の意味・わかりやすい解説

還流 (かんりゅう)
reflux

蒸留に際し,塔底にある缶またはリボイラーでの加熱によって発生した蒸気は蒸留塔内を上昇し,塔頂から出てくる蒸気はコンデンサー(凝縮器)で凝縮されて液となり,その一部は製品として留出されるが,一部は再び塔頂近くの塔内へ戻される。このように蒸留塔の内部では,上方から液が下降し,下方から蒸気が上昇して気-液接触が行われる。この塔へ戻される液(還流液)のことを単に還流またはリフラックスといい,還流の量Lと留出液の量Dとの比L/D還流比reflux ratioと呼ぶ。コンデンサーには全縮器と分縮器とがあって,全縮器では塔頂からの蒸気はすべて凝縮されて液となるが,分縮器では一部は蒸気またはガスのまま取り出され,一部が液化されて還流となる。実験室の蒸留塔などでは塔頂の塔内にコンデンサーを設置する場合もある。一般に還流比が大きいほど分離性能が大となり,還流比が無限大の場合を全還流という。また還流比がある値よりも小さくなると,望む分離ができなくなり,このような値を最小還流比と呼んでいる。
蒸留
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化学辞典 第2版 「還流」の解説

還流
カンリュウ
reflux

蒸留において,一度精留塔の塔頂より出た蒸気が,分縮器あるいは全縮器によって冷却凝縮され,液となってふたたび精留塔の塔頂に戻されることをいう.発生した蒸気の全部を凝縮させて戻すとき全還流というが,このときは留出液を得ることができないので,実際の操業では行われない.しかし,運転開始のとき,早く定常状態にするため,しばしば全還流運転が利用されている.凝縮した液の一部を還流し,残りを留出液として系の外に取り出して製品とする.これを部分還流という.還流量の留出量に対する比を還流比といい,この値は0から∞まで変化させることができる.また,還流比をしだいに小さくすると,望む留出濃度を得るためには,無限の段数(理論段数)が必要になる.このときの還流比を最小還流比といい,精留塔の設計上,一つの重要な値とされている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「還流」の意味・わかりやすい解説

還流
かんりゅう
reflux

(1) 加熱によって生成する蒸気を凝縮させ液体とし,もとに戻す操作を機械的に連続して行うこと。揮発性の有機化合物を開放容器内で長時間加熱反応させるとき,反応容器の上部冷却器をつけ,生じた蒸気を凝縮させ液状にして反応容器に戻しながら反応を行う操作である。
(2) 精留塔の分留効果を高めるための手段。精留塔頂より出てくる蒸気を凝縮させて液状とし,塔上部に戻す操作。塔頂からの蒸気全部を凝縮させ,その全部を塔上部に戻す場合,分離効果は最大となる。塔頂からの凝縮液全部を戻さないで取出してしまえば,単蒸留の状態となり,分離効果は最も悪くなる。実際にはこの中間の状態で精留を行う。

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世界大百科事典(旧版)内の還流の言及

【蒸留】より

… そこで,次にくふうされたのが図のbのような回分蒸留塔である。下方のフラスコまたは缶にやはり100gの水溶液を入れて加熱し,塔頂から出てきた蒸気を凝縮させて,それを再び塔頂に戻す(還流)と,その液は温度が低いので,下から上ってくる蒸気と接触すると蒸気の一部を凝縮させる。その際重い成分(この場合は水)をより多く凝縮させるので,蒸気の凝縮しない部分は軽い成分(この場合メチルアルコール)に富むことになり,このような繰返しによって塔頂にメチルアルコールが集まってくる。…

※「還流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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