生体に栄養を補給する経路には,(1)口から飲食する,(2)胃または小腸に人工的に作った瘻孔(ろうこう)(胃瘻または腸瘻)に体外から管を挿入し,この管から栄養液を注入する,(3)血管内に挿入した管から栄養液を注入する,(4)肛門から栄養液を浣腸し,直腸で吸収させる,などの方法がある。中心静脈栄養はこの(3)に属するもので,末梢の静脈から心臓に近い静脈(中心静脈,上大静脈や下大静脈の心臓に近い部分)まで長い管を挿入し,栄養液を無菌的に注入する方法である。人間が生きていくための1日の必要熱量は体重1kg当り最低30~45kcalであり,体外からこれだけの栄養が補給できない場合は,自己の筋肉や脂肪を消費して必要カロリーを維持しようとする(タンパク異化作用)。しかし,必要熱量を血管から補給するには,ブドウ糖とアミノ酸から成る高浸透圧の液が必要であり,これを末梢静脈から注入すると,静脈炎をひき起こす結果になる。このため,心臓に戻ってくる大量の血液で注入液が希釈されるよう,中心静脈まで管を挿入してゆっくり点滴注入するこの方法が編み出された。末梢静脈から注入する液よりも高カロリーの液を注入することから,高カロリー輸液とも呼ばれ,また,最近では脂肪製剤,ビタミン類,ミネラルなども加えた総合的な栄養補給が可能となったのでTPN(total parenteral nutrition)ともいわれる。中心静脈栄養は,腸からの栄養吸収が望めない場合(口腔,食道,胃,十二指腸の病気で口から食事がとれなかったり,食物が小腸まで到達できない状態にあるときのほか,腸自体の病気で栄養を吸収できない状態にあるとき)や,腸からの栄養吸収を止めたい場合(消化管の手術後,膵炎,消化管瘻の合併などで腸運動を可及的に制限したいときなど)に用いられる。
執筆者:小野 美貴子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…また,消化器系の手術後などのように,経口摂取が数日阻害されるような場合にも,まず必要な水分,電解質を補う必要がある。さらに,消化器疾患などで腸からの栄養吸収が望めないときや,治療のために腸からの吸収を止めたいときなどには,必要とする全カロリーを補うために,中心静脈栄養が行われる。なお,輸液のうちで注入する液体が血液である場合は輸血と呼ぶ。…
※「中心静脈栄養」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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