出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
左右の肩甲骨の肩峰端と胸骨柄とを連結している1対の長骨で、ほぼ水平に横たわり、長さ13~14センチメートル。鎖骨は胸壁の左右上縁で皮下に触れることができる。鎖骨のすぐ下側には第1肋骨(ろっこつ)がある。体表面では鎖骨部の上部と下部にくぼみがあり、それぞれ鎖骨上窩(じょうか)、鎖骨下窩とよぶ。鎖骨の形は緩いS字状ないしはイタリック体のf字状の彎曲(わんきょく)を示し、外側3分の1は後方に凸彎で、内側3分の2は前方に凸彎である。また、鎖骨の外側3分の1は太くて扁平(へんぺい)であり、内側3分の2は細くて丸みのある三角柱状である。鎖骨内部は髄腔(ずいくう)がなく海綿質であるが、骨体中央部壁には厚い緻密(ちみつ)質がある。鎖骨の外側から3分の1の部位は骨折の好発部となっているが、これは、鎖骨の外側部と内側部の2骨化点の接する部分がここにあたるので外力に弱いと考えられる(骨化点とは骨形成が始まる部位)。鎖骨は肩甲骨とで上肢帯を構成し、胸壁に筋肉のみでついている肩甲骨の支えともなっている。この仕組みにより、肩甲骨と関節をつくっている上腕骨は胸郭にじゃまされることなく自由な運動ができるのである。鎖骨は女性では男性よりも短くて薄く、彎曲も弱い。
[嶋井和世]
脊椎動物の肩帯(または前肢帯,上肢帯),つまり前肢を胴につなぐ骨格の一部をなす左右1対の骨。哺乳類では,肩甲骨とともに上肢帯をつくる骨で,胸の前面の上の境をなしている。棒のような形の骨で,軽くS字状に曲がっている。〈鎖〉とは閉ざすもの,または鍵という意味で,骨の形が鍵に似ているところから,ラテン語でこう名づけられたのである。一方の端は胸骨と関節を営み(胸鎖関節),他端は肩甲骨の肩峰と関節を営んでいる(肩鎖関節)。鎖骨は意外によく動く骨で,胸鎖関節で多軸性の運動を行う。哺乳類のなかで,ウシ,ウマなど有蹄類,イヌなど多くの食肉類では,鎖骨が退化してなくなっているか,あるいはまた靱帯状になっている。クジラ類も鎖骨をもたない。鳥類では,左右の鎖骨が中央でつながって,V字形またはU字形の首飾のような骨になっている。最大の筋肉である大胸筋の前部がこれに付着する。この骨を2人で引っぱりあい,大きいほうの破片を取った者の願いがかなえられるという言伝えから,鳥の鎖骨をウィッシュボーンwishbone(暢思(ちようし)骨)と呼ぶ。
→骨格
執筆者:藤田 恒太郎+田隅 本生
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…前頭骨,側頭骨,後頭骨,蝶形骨,上顎骨,下顎骨などの骨からなる。頭骨鎖骨clavicle胸の前面の上界をなす骨であり,一方は胸骨と関節を営み,他の一方は肩甲骨と関節でつながる。鎖骨肩甲骨shoulder blade肩の背部にある骨。…
…脊椎動物の体の肩部にあって前方の有対肢(胸びれまたは前肢)の骨格や筋肉の土台となり,それらを胴に固定する働きをもつ骨格。ヒトでは上肢帯とよばれ,鎖骨と肩甲骨がこれにあたる。後方の有対肢(腹びれまたは後肢)に対しても類似の骨格があってこれを腰帯(ようたい)(骨盤のことでヒトでは下肢帯)とよび,肩帯と腰帯を合わせて一般に肢帯という。…
…脊椎動物の進化の歴史では,脊索が最初に現れたことはほぼ確かであるが,軟骨と骨とはともに起源がきわめて古く,どちらが先に現れたのかは明らかでない。 脊椎動物の骨格は一般的に,頭骨,脊柱,前肢の骨,後肢の骨,前肢を胴につなぐ前肢帯(鎖骨など),後肢を胴または脊椎につなぐ後肢体(骨盤)からなり,そのほかに多少の付属的な骨格がある。 脊柱は脊索に代わって体の中軸をなす骨格で,これは脊椎(椎骨)という骨(または軟骨)が1列に連結されてできている。…
※「鎖骨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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