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中村仲蔵(初代) なかむら・なかぞう

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朝日日本歴史人物事典の解説

中村仲蔵(初代)

没年:寛政2.4.23(1790.6.5)
生年:元文1(1736)
江戸中期の歌舞伎役者。江戸生まれ。浪人斎藤某の子とも渡し守の某の甥ともいう。長唄師匠5代目中山小十郎と踊り師匠志賀山お俊夫妻の養子。中村勝十郎(のち2代目中村伝九郎)の門弟。初名中村市十郎から中蔵と改名,宝暦11(1761)年に仲蔵と改める。天明5(1785)年11月から1年間のみ6代目中山小十郎を名乗った。屋号栄屋,俳名秀鶴。若衆形から立役さらに実悪に転じた。容貌風姿に優れ,表情の演技が巧みであった。時代物を本領として,立役,色悪,敵役から女形に至るまで広く演じて成功した。志賀山流を学んで所作事に長じ,8代目志賀山万作を継ぎ,中村座の振付を兼ねた。従来女形の専売であった所作事を立役として積極的に演じて舞踊劇として大成させた。演技演出に新しい解釈を施して後期江戸歌舞伎の写実芸脈の源流的存在となった。『仮名手本忠臣蔵』五段目の斧定九郎役の扮装を,従来は山賊風であったのを落魄した浪人姿に改めたことは特に有名で,苦心談が講談や人情噺に脚色されて知られている。仲蔵の演技演出は「秀鶴の型」「仲蔵振り」として後世に伝えられた。当たり役は多く,工藤祐経,悪七兵衛景清,関守り関兵衛,大日坊,髭の意久,暫のウケ等が代表である。 初め仲蔵の素質を見抜いて取り立てた4代目市川団十郎の力も大きかったが,歌舞伎役者の家格や身分が固定してきた江戸中期にあって,下回りから座頭にまで出世し得たことは仲蔵自身の卓抜した才能と努力の結果であるとともに稀有な例であった。文筆にも趣味があり,『月雪花寝物語』『秀鶴日記』などの手記を残しており,当時の劇界の状況や俳優の生活を知るうえで貴重な資料となっている。 初代仲蔵が中山小十郎と改めていた1年間,養子の中村万作が仲蔵を名乗ったが,代数には加えない。また大坂には別系統の中村仲蔵の名跡があり,江戸中期から幕末・明治初期まで4代を数えるが,そのなかでは初代,4代が名優として知られている。<参考文献>「秀鶴日記」(吉田瑛二『歌舞伎絵の研究』),『日本庶民文化史料集成』6巻

(池上文男)

出典|朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版
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