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中立説 ちゅうりつせつneutral evolution theory

知恵蔵の解説

中立説

木村資生が唱えた分子進化の理論。たんぱく質や核酸に見られる突然変異の多くは、適応上特に有利でも不利でもなく、そうした中立突然変異遺伝的浮動を通じて集団内に固定されることによって分子進化が起こるという説。当初、自然淘汰万能論の立場をとる正統派進化論者から激しい批判を受けたが、その後、多くの証拠が集まり、中立的な突然変異による分子進化は事実として広く認められている。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ちゅうりつせつ【中立説 neutral theory】

DNAやタンパク質といった生体高分子の進化にあずかる突然変異の多くは,自然淘汰とほとんど無関係(中立)であるという説。各種の生物のDNAの塩基配列やヘモグロビン,チトクロムcなどのタンパク質のアミノ酸配列を比較検討し,これら分子の構造変化の面から生物進化を探る分子進化の研究が1960年代以後急速に発展した。構造変化の多くは塩基対,アミノ酸の置換であり,重複,欠失なども起こっている。分子レベルでの進化の速度,つまり塩基対の置換が起こる速度はタンパク質によって異なり,またタンパク質のうち機能上重要な部位では遅く,そうでない部位では速い。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

ちゅうりつせつ【中立説】

進化機構についての理論的仮説。進化をもたらすのは、機会的な遺伝子頻度の変動の結果集団に固定される生存に有利でも不利でもない(中立な)突然変異遺伝子群であり、自然淘汰は関与していないとする説。1968年(昭和43)木村資生もとおが理論的根拠とともに提唱した。 → 分子進化

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

世界大百科事典内の中立説の言及

【進化論】より

… 分子生物学の成立と発展は,分子進化の研究を進化学の重要な分野として確立した。その成果として生まれた木村資生(もとお)の中立説(1968)は,自然淘汰万能の観念に問題を投じ,衝撃を与えるものとなった。またその後,自然淘汰によって新種の起原となるほどの新たな形質が生じうるか,進化の経過は果たしてダーウィン説でいうような連続的,漸次的なものであるかなどに関して,現代科学の成果をふまえた問題提起がなされ,進化学説への根本的再検討の気運が強まっている。…

【突然変異】より

… 突然変異は生物の遺伝的変異を維持・増加する機構の一つである。ところで,生物の進化の原動力が自然淘汰であるとするダーウィン以来の考えに対して,木村資生は,生物集団内に蓄積されている遺伝的変異のほとんどには,淘汰に対する有利不利という差がほとんどないという知見に基づいて,進化の原動力は遺伝子の機会的浮動であるという中立説を唱えた(1968)。分子レベルでの研究成果も中立説と矛盾しないものが多いことから,近年,この説は大きく注目されている。…

※「中立説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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