日本大百科全書(ニッポニカ) 「丸岡明」の意味・わかりやすい解説
丸岡明
まるおかあきら
(1907―1968)
小説家。東京に生まれる。慶応義塾大学仏文科卒業。1930年(昭和5)水上(みなかみ)滝太郎の推薦で『三田(みた)文学』に処女作『マダム・マルタンの涙』を発表、好評を得る。35年最初の長編『生きものの記録』を発表、心理主義的手法で、当時のブルジョアジーの内面の退廃を描いた。戦後は『三田文学』の編集に携わる。53年(昭和28)ごろから、能に関するエッセイや解説書などをしきりに書く。ほかに『コンスタンチア物語』(1949)、原民喜(たみき)をモデルにした『贋(にせ)きりすと』(1951)、芸術選奨文部大臣賞を受けた『静かな影絵』(1965)などがある。作品は身辺に取材したものが多く、都会的な細やかな感性を描いている点に特色がある。
[中石 孝]
『『丸岡明小説全集』全三巻(1969・新潮社)』