乍がら(読み)ながら

精選版 日本国語大辞典 「乍がら」の意味・読み・例文・類語

な‐がら【乍がら】

〘副助〙 (接尾語接続助詞とする説もある)
体言または動詞の連用形を受け、「本性のままに」「…に従って」の意を表わす。
万葉(8C後)一・三八「やすみしし 吾が大君 神長柄(ながら) 神さびせすと 吉野川 激つ河内に 高殿を 高知りまして」
※延喜式(927)祝詞「教へ悟し給ひ那我良(ナガラ)船居作りたまへれば」
② (①の意から) 「まま」「ままで」の意を表わす。動詞の連用形・体言・形容詞語幹副詞、まれに活用語連体形を受ける。
※万葉(8C後)一八・四一三〇「針袋帯び続け奈我良(ナガラ)里ごとに照らさひあるけど人も咎めず」
※竹取(9C末‐10C初)「旅の御姿ながらおはしたり」
③ 動詞の連用形を受け、二つの動作が並び行なわれることを表わす。つつ。動詞を省略した「涙ながら」のような言い方もある。→なみだながら
※万葉(8C後)一九・四一五四「憤る 心の内を 思ひ延べ 嬉しび奈我良(ナガラ)枕付く つま屋の内に」
徒然草(1331頃)六〇「食ひながら文をも読みけり」
④ 体言・形容詞語幹・活用語の連用形、まれに活用語の連体形を受け、「にもかかわらず」「ものの」「けれども」の意を表わす。
伊勢物語(10C前)八四「身は賤しながら母なむ宮なりける」
今昔(1120頃か)二二「一の大臣と云ふ乍ら美麗装束、事の外にて参たる、便无き事也」
⑤ (②の意から。数詞や副詞「さ」を受けて) 「すべて」「…とも」の意を表わす。
大鏡(12C前)六「犬の前足ふたつながら肩にひきこして」
※徒然草(1331頃)五九「心にかからん事の本意を遂げずして、さながら捨つべきなり」

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