出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…感覚器官に加えられる外的および内的刺激によって引き起こされる意識現象のこと。
【哲学における感覚】
仏教用語としては古くから眼識,耳識,鼻識,舌識,身識(これらを生じさせる五つの器官を五根と称する)などの語が用いられたが,それらを総称する感覚という言葉はsensationの訳語として《慶応再版英和対訳辞書》に初めて見える。日常語としては坪内逍遥《当世書生気質》などに定着した用法が見られ,また西田幾多郎《善の研究》では知覚と並んで哲学用語としての位置を与えられている。…
…生命的存在である〈有情(うじよう)〉を構成する五つの要素すなわち,色(しき),受(じゆ),想(そう),行(ぎよう),識(しき)の五つをいう。このうち色(ルーパrūpa)には,肉体を構成する五つの感覚器官(五根)と,それら感覚器官の五つの対象(五境)と,および行為の潜在的な残気(無表色(むひようしき))とが含まれる。受(ベーダナーvedanā)とは,苦,楽,不苦不楽の三つの感受作用をいう。…
…サンスクリットのインドリヤindriya(元来の意味は力)の漢訳。一般にインド哲学では5種の感覚機能または器官(眼,耳,鼻,舌,身)を意味し〈五根〉と総称するが,すでにウパニシャッドの中では身体に宿る生命活動機能の一つとして〈五根〉が列挙されている。インド哲学諸派は五根を物質界(元素)に属するものと考えるが,単なる身体の一部(眼球など)とは区別する傾向が強い。…
…それは(1)同一空間に2者が共存できないもの(質礙(ぜつげ)),(2)変化して壊れてゆくもの(変壊(へんね)),(3)悩まされるもの(悩壊(のうえ))という三つの性質を備えたものとして次のようなものを色と考える。まず五蘊(ごうん)のなかの一つである色蘊の色とは,こころに対応する物質的なるものの総称であり,具体的には五根(眼,耳,鼻,舌,身の五つの感覚器官)と五境(色,声,香,味,触の五つの感覚対象)と無表色(戒体など具体的に知覚されない物質的なるもの)との11種がある。次に五境の一つの色とは,視覚の対象となる〈いろ〉(顕色(けんじき))と〈かたち〉(形色(ぎようしき))とをいう。…
…仏教では,認識作用の対象(対境)を〈境(きよう)〉という。認識する感覚器官とその働きを合わせて〈根(こん)〉といい,眼(げん)(見る),耳(に)(聞く),鼻(び)(嗅ぐ),舌(ぜつ)(味わう),身(しん)(触れる)の五根にはそれぞれ対応する対象があり,それらを順次に色境(しききよう)(いろ・かたち),声境(しようきよう)(声や音),香境(こうきよう)(香りや臭気),味境(みきよう)(甘・辛などの味),触境(しよくきよう)(触覚による冷・暖,堅・軟など)の五境とする。これら五根・五境のほか,意根の対象として法境(ほうきよう)を立て,合して六根・六境とする。…
※「五根」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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