交通政策基本法(読み)こうつうせいさくきほんほう

共同通信ニュース用語解説 「交通政策基本法」の解説

交通政策基本法

人口減少国際競争激化といった状況の変化を踏まえ、長期的な視点から交通政策を進める目的で2013年に成立した。地域活性化や大規模災害への対応、離島中山間地での交通手段確保、高齢者や障害者らの円滑な移動などの基本理念を盛り込んでいる。関連施策を進めるため、政府は今年2月、20年度までを対象期間とする基本計画閣議決定した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「交通政策基本法」の意味・わかりやすい解説

交通政策基本法
こうつうせいさくきほんほう

鉄道、バス、自動車、航空機など公共交通の整備・維持に関する基本理念をまとめた法律。平成25年法律第92号。2013年(平成25)に成立し施行された。過疎や少子高齢化が進む地方での暮らしの足の確保、巨大災害に備えた耐震強化、老朽設備の改修、代替ルートの確保、国際競争力を高める空港・港湾機能の充実、弱者が移動しやすいバリアフリー化、環境負荷の低減などを基本理念に明記。国、地方自治体、事業者の責務、および国民の役割を明確にし、街づくりや観光振興策と連携しながら、交通体系を一体的に整備するねらいがある。2020年(令和2)の改正では、本格的な人口減少、国土強靭(きょうじん)化、感染症流行を踏まえ、高速交通網など公共交通機能を衛生面を含め安全に維持するため、国が支援することを明記した。政府は同法に基づいて交通政策基本計画(2015年に第一次、2021年に第二次)を策定し、道路運送法(昭和26年法律第183号)、地域公共交通活性化法(平成19年法律第59号)など個別法制を整備してコンパクトシティ形成アジア・ゲートウェイ構想などの具体策に取り組んでいる。政府は進捗(しんちょく)度合いを毎年国会に報告し、交通政策の課題などをまとめた白書を閣議決定するよう定めている。

 日本の交通法制は、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)、道路運送法、航空法(昭和27年法律第231号)など個別事業者向け業法を中心に整備されてきた。このため民主党(当時)が中心となり、だれもが自由・安全に移動できる「移動権」を盛り込んだフランス国内交通基本法を参考に、基本法整備を目ざしたが、2002年、2006年、2011年にいずれも廃案となった。しかし2011年の東日本大震災後、防災や地域振興につながる基本法が必要との機運が盛り上がり、交通政策基本法が制定された。なお同法には、訴訟が乱発されるとの懸念から移動権は盛り込まれなかったが、「日常生活に必要な交通手段の確保」との文言が明記されている。

[矢野 武 2021年5月21日]

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