道路運送法(読み)どうろうんそうほう

精選版 日本国語大辞典 「道路運送法」の意味・読み・例文・類語

どうろうんそう‐ほう ダウロウンソウハフ【道路運送法】

〘名〙 道路運送事業の適正な運営と公正な競争を確保するとともに、道路運送に関する秩序確立を図るための法律。昭和二六年(一九五一制定

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デジタル大辞泉 「道路運送法」の意味・読み・例文・類語

どうろうんそう‐ほう〔ダウロウンソウハフ〕【道路運送法】

道路運送事業の適正な運営および公正な競争を確保し、道路運送に関する秩序を確立するための法律。昭和26年(1951)施行。

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改訂新版 世界大百科事典 「道路運送法」の意味・わかりやすい解説

道路運送法 (どうろうんそうほう)

道路運送事業の適正な運営と公正な競争を確保するとともに,道路運送に関する秩序を確立するための法律。1951年公布。道路運送の法的規制の歴史は,自動車の普及の態様と密接にかかわる。日本の自動車第1号は,1900年に大正天皇の結婚を祝して,アメリカから献上された電気自動車であるが,業としての自動車輸送は,02年の東京明治屋酒店の自家用トラックによる貨物輸送,07年の帝国運輸による警視庁の許可を得たトラック事業等を草分けとする。

その後,乗合自動車の営業の出現等に伴い,1919年に内務省が自動車取締令を公布し,一定の路線または区間によって自動車による運輸業を営もうとする者は地方長官免許を受けることを必要とすることとした。23年の関東大震災による鉄道網の破壊は日本の道路運送事業の一大発展の契機となったが,28年に陸上運輸の監督権が逓信省から鉄道省へ移管され,31年には内務省が道路および交通警察を担当し,自動車交通事業法が公布された(1933施行)。同法は,一般交通の用に供するため路線を定めて定期に自動車を運行して旅客または物品を運送する事業を営もうとする者は,運賃その他に関する事業計画を定めて,主務大臣の免許を受けることを必要とする旨を規定して,その監督をはかるとともに,他方でその助成の体制を整えた。日中戦争から太平洋戦争へと進む中で,陸運統制令(1940公布)や自動車交通事業法の改正(1941)による統制組合の結成等の強制統合がなされた。

 戦後GHQの指導の下,行政の民主化と公正競争の確保を基本的な目的とする旧道路運送法(1947公布)が制定され,道路運送委員会による公聴会制度,免許基準の設定と公示,一路線一営業原則の廃止等それまでとはまったく異なる,新たな体制が整えられた。1951年に本法が制定され,その後数次の改正を経て,その性質,制度も変化して今日に至っている。

当初は乗合バス,貸切バス,タクシーハイヤー,一般路線貨物自動車運送事業,一般区域貨物自動車運送事業等々について,参入規制,運賃規制,運送引受けの義務化等々の細かな規制がなされていた。

 1980年代以降の行財政改革・規制緩和の流れの中で,道路運送法の改正や,運用における規制の緩和が実施された。1989年の法改正は,貨物運送事業について,これを道路運送法の規制対象から外し,貨物運送事業法を別に定めてより緩和された規制の下に置いた。新法の下で,運賃,料金についても認可制から届出制への変更を実施した。依然として道路運送法の規制の下にある旅客自動車運送事業についても,97年には,戦後一貫した政策であったタクシーの同一地域同一運賃制の見直し,競争料金制度の導入などが実施された。従来,独占禁止法の特別法として,認可料金等について競争制限が当然視されていた道路運送法の適用についても,独占禁止法の適用が問題とされる状況が生じている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「道路運送法」の意味・わかりやすい解説

道路運送法
どうろうんそうほう

貨物自動車運送事業法(平成1年法律第83号)とともに、道路運送事業(旅客自動車運送事業、貨物自動車運送事業、自動車道事業)の適切な運営、公正な競争、道路運送に関する秩序を確保することにより、道路運送の総合的な発達を通じて公共の福祉を増進することを目的とする法律。昭和26年法律第183号。

 おもな内容は次の通りである。

(1)旅客自動車運送事業の種類、事業の許可・届出、運賃・料金の認可・届出、運送約款・事業計画の変更の認可、運送引受け義務、運行管理者、従業員、輸送の安全、事業の改善命令、事業の休止・廃止など旅客自動車運送事業に関する事項。

(2)自動車道事業の免許、工事施行、技術上の基準、構造設備の検査、使用料金の認可、供用約款・事業計画の変更の認可など自動車道、自動車道事業に関する事項。

(3)国営自動車道事業に関する事項。

(4)自家用自動車の使用に関する有償旅客運送の登録、賃貸の制限など自家用自動車の使用に関する事項。

 2002年(平成14)2月施行の改正法では、バス事業の参入規制が免許制から許可制へ、休廃止を許可制から6か月前までの事前届出制へ、運賃を認可制から上限認可範囲内の事前届出制とする等の規制緩和が行われた。2006年10月施行の改正法では自治体による貸切代替バスや新たなコミュニティバスの運行、およびNPO(民間非営利組織)等による自家用自動車での福祉有償運送などが登録制として導入された。

[天野和治・土居靖範]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「道路運送法」の意味・わかりやすい解説

道路運送法
どうろうんそうほう

昭和 26年法律 183号。道路運送事業の適正な運営と公正な競争を確保し,道路運送に関する秩序を確立することにより,道路運送の総合的な発達をはかって,公共の福祉を増進することを目的とする法律。道路運送事業というのは,旅客自動車運送事業,貨物自動車運送事業,旅客車両運送事業,自動車道事業をいう。旅客自動車運送事業の免許・許可制,業務の規制・監督,自動車道の免許制,自家用自動車の使用などについて詳細に規定する。なお,貨物自動車運送事業については貨物自動車運送事業法が定める。 2000年の改正 (2002年2月施行) によりタクシー,バスは免許制から許可制に移行し,参入,撤退が容易になった。料金も上限以下ならば原則として自由に設定できる。

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世界大百科事典(旧版)内の道路運送法の言及

【自動車運送事業】より

…道路運送事業の一種で,道路運送法第2条によれば,〈他人の需要に応じ,自動車を使用して旅客を運送する事業及び自動車(軽自動車を除く)を使用して貨物を運送する事業〉をいう。ちなみに道路運送事業とは,自動車運送事業,自動車道事業,自動車運送取扱事業,軽車両等運送事業を総称していう(同法第2条)。…

【タクシー】より

…タクシーキャブtaxicabの略称。タクシーの法律上(道路運送法)の名称は〈一般乗用旅客自動車〉といい,それによる運送事業は〈一個の契約により乗車定員10人以下の自動車を貸し切って旅客を運送する一般自動車運送事業〉(同法第3条)と定義されている。乗合運送でないという点で乗合バスとは違い,10人乗り以下の自動車による貸切輸送である点で貸切バスとも違う運送形態である。…

※「道路運送法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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