精選版 日本国語大辞典 「低」の意味・読み・例文・類語
ひく・い【低】
[一] 空間的に下の方にあったり、下の方まで広がってあったりするさま。
① 下の方にある。下の方に位置している。
③ 丈が短い。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「セイノ ficui(ヒクイ)モノ」
④ 態度、物腰などが謙虚である。丁重である。
※やみ夜(1895)〈樋口一葉〉三「心は低(ヒク)くせよ身を惜しむな、其身に合ひたる労働ならば夫れ相応に世話しても取らすべしとて」
[二] 価値や序列が下位にあるさま。
① 身分や地位、生活程度などが下位にある。
※玉塵抄(1563)四四「位のひくいはやすい玉を持ぞ。圭はたかい玉なり、宰相が持つ玉なり」
※コンテムツスムンヂ(捨世録)(1596)三「ニクシンワ ficuqi(ヒクキ) コトヲ モトムル トキンバ、ワガミト トモニ カッセンシ ワレト ワガミヲ ヲモニト ヲモウ ナリ」
③ 体裁、構成、調子などの張り、緊張感に乏しい。説得力に欠ける。「調子の低い演説」
[三] 数量が少ないさま。
① 金がかからない。廉価である。安い。
※公家言葉集存(1944)八「ヒクイ 低価なること」
※制度通(1724)一「天のめぐりは北高く南卑く」
③ 音や声が小さくて弱い。また、低音である。音や声の振動数が少ない。
※和英語林集成(初版)(1867)「コエガ hikui(ヒクイ)」
④ 射芸で、張弓の弦と弓との距離が狭い。
[語誌]古く「低」の意には漢文訓読文では「ひきなり」、平仮名文では「みじかし」「ちひさし」などが用いられていた。平安末ごろに「ひきし(ひきい)」が成立したが、「ひきし」の変化した「ひくし(ひくい)」が一般化するのは室町時代末以後である。
ひく‐げ
〘形動〙
ひく‐さ
〘名〙
ひく‐み
〘名〙
ひき・い【低】
〘形口〙 ひき・し 〘形ク〙
① =ひくい(低)(一)①
※類従本紫式部日記(1010頃か)消息文「額いたうはれたる人の、まじりいたうひきく、顔もここはと見ゆる所なく」
② =ひくい(低)(一)②
③ =ひくい(低)(一)③
※平家(13C前)八「㒵大に、せいひきかりけり」
④ =ひくい(低)(二)①〔法華経音訓(1386)〕
⑤ =ひくい(低)(三)
ひき【低】
〘形動〙 (背などの)低いさま。
※作庭記(1040頃か)「高き滝必しも広からず。ひきなる滝必しもせばからず」
ひくま・る【低】
〘自ラ五(四)〙 低くなる。
※琵琶伝(1896)〈泉鏡花〉三「更に低まりたる音調の、風なき夜半に弱々しく」
ひき・し【低】
〘形ク〙 ⇒ひきい(低)
ひく・し【低】
〘形ク〙 ⇒ひくい(低)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報