交通・通信施設が未発達な時代・地域において,物資の配達や伝言を伝えることを業としたもの。便達屋と呼ぶこともある。たとえばある村の人が隣村の知人に届物をしたい時,もしくは連絡事項を伝えたい時,この便利屋に託すのである。必ずしも近距離に限られず,かなりの遠距離を往復するものもあった。料金が安く,しかも比較的確実であったため,明治・大正時代にはかなり活躍していた。発生時期は明確ではないが,形態は専業と兼業の2種類あった。後者は行商人あるいは物資運搬業者がこれを兼ねたもので,近世にはむしろこの形態が一般的であり,一つの職業として認識されるまでには至らなかった。それが明治以降需要の拡大に伴い,専業者が出現したものと思われる。その後専業者は見られなくなってしまい,小口貨物の配達や電話網の充実がその業務を引き継いでいるが,近年ふたたび業者が増加している。
執筆者:胡桃沢 勘司
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