保証業務(読み)ほしょうぎょうむ(英語表記)assurance engagement

日本大百科全書(ニッポニカ) 「保証業務」の意味・わかりやすい解説

保証業務
ほしょうぎょうむ
assurance engagement

企業に関する情報または行為について評価または測定した結果を報告する業務。国際会計士連盟(International Federation of Accountants:IFAC)が公表している保証業務基準(ISAE3000)において規定されている。日本では、2004年(平成16)に企業会計審議会から「財務情報等に係る保証業務の概念枠組みに関する意見書」が公表され、その内容が明らかにされた。

 財務諸表以外の情報の開示とその信頼性の確保に対する社会からの多様な期待が高まり、公認会計士の行う業務範囲は拡大し、多様なものとなってきている。そのため、監査やレビューなどを含めた包括的な概念として保証業務を規定することが必要となった。保証業務の定義は、「主題に責任を負う者が一定規準によって当該主題を評価又は測定した結果を表明する情報について、又は、当該主題それ自体について、それらに対する想定利用者の信頼の程度を高めるために、業務実施者が自ら入手した証拠に基づき規準に照らして判断した結果を結論として報告する業務」(前掲意見書)をいう。主題とは、一定の信頼性を付与する対象となる情報または行為をいい、財務諸表監査を例にあげれば、主題は財務諸表において表示されている財政状態・経営成績等であり、主題に責任を負う者は、財務諸表の作成に責任を負う経営者である。保証業務は、保証する人(業務実施者)、情報発信者(主題に責任を負う会社)、情報を利用するステークホルダー(想定利用者)の三者が要件になっており、この三つがないと成立しない。

 経済取引に保証業務が介入しないと、たとえば情報利用者は発信者に対してガバナンス統治)の強化を要求したり、取引をためらったりする。リスクも当然あり、リスク料もかかる。このため、第三者がこの保証業務を行うことによって経済取引がより少ないコストで効率的かつスムーズに行われる。これが保証業務のメリットである。

 保証業務は、合理的保証業務と限定的保証業務の二つのレベルの保証内容に分かれる。合理的保証業務は、業務実施者が結論を表明する基礎として、保証業務リスクを受入れ可能な低い水準に抑えた保証業務をいう。業務実施者の結論は、適合する規準によって主題を測定または評価した結果に対する業務実施者の意見を伝達する積極的形式で表明される。たとえば、「当監査法人は、事業体がすべての重要な点において○○法を遵守しているものと認める。」のように表明される。財務諸表監査や内部統制報告書監査がこの合理的保証業務に相当する。したがって、監査報告書において、適正か不適正か明確に意見が表明される。

 限定的保証業務は、業務実施者が保証業務リスクを個々の業務の状況において受入れ可能な水準に抑えるが、保証業務リスクの水準が合理的保証業務に比べてより高く設定される保証業務をいう。したがって、その結論は、実施した手続および入手した証拠に基づいて、主題情報に重要な虚偽表示があると業務実施者に信じさせる事項が認められたかどうかを記載する形式で表明される。たとえば、「当監査法人が実施した手続および入手した証拠に基づく業務において、事業体が○○法を遵守していないと信じさせる事項がすべての重要な点において認められなかった。」のように表明される。

[中村義人 2022年11月17日]

『内藤文雄編著『監査・保証業務の総合研究』(2014・中央経済社)』『青木雄二著『公認会計士による保証業務の体系的理解』(2016・第一法規出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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