改訂新版 世界大百科事典 「保険約款」の意味・わかりやすい解説
保険約款 (ほけんやっかん)
保険契約において契約当事者が約定した契約条款。保険約款には,一般的・標準的な保険契約の内容をあらかじめ保険事業者が定型的に定めた普通保険約款(普通約款)と,これを変更・補充・排除する特別保険約款(特別約款,特別条項または特約ともいう)がある。普通保険約款は,企業が不特定多数の相手と取引する場合に円滑性,安全性,迅速性を主たる目的として共通の内容として定められる,いわゆる普通契約条款の一種であるが,保険事業の性質上,同種の契約を多数集合して危険の総合化,平均化をはかるという統計上の要請も大きい。また,巨大保険の保険引受けに際して複数の保険事業者が共同して契約を行い,かつ共同して再保険をする必要性もあることから,損害保険では業界統一の保険約款が一般的である。これに対して生命保険の分野では,各社ごとの保険約款を使用してそれぞれ多少の相違がある。なお海上保険契約では,イギリス法に準拠する英文保険約款が広く使用されている。このように,保険契約者は別段の特約がないかぎり,あらかじめ定められた普通保険約款に従って保険契約を締結する(付従契約,付合契約)ことになるので,保険契約者の利益を守るため普通保険約款の作成・使用・変更については大蔵大臣の認可が必要とされる。また保険証券には原則として保険約款の全文を記載し,またはこれを記載した書面を添付して契約者に契約内容を開示することが義務づけられている。
執筆者:高木 秀卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報