俵藤太物語(読み)たわらとうだものがたり

改訂新版 世界大百科事典 「俵藤太物語」の意味・わかりやすい解説

俵藤太物語 (たわらとうだものがたり)

御伽草子。田原藤太秀郷(ひでさと)の武勇譚。2巻。寛永(1624-44)ころ刊行の絵入り刊本以後,広く流布した。朱雀院の御代,田原藤太秀郷は,近江国瀬田の唐橋に20丈ばかりの大蛇が横たわって往来貴賤が難儀しているのを,へいきで背中を踏んで渡りおおせる。下野へ下る東海道の宿で,夜更けに二十ばかりの美しい女房に訪われ,竜宮の敵である三上山百足(むかで)退治を依頼される。この女房は,大蛇の変化したものであった。秀郷はみごとこれを退治し,女房から尽きることのない巻絹と米俵,思いのままの食物がわき出る鍋の3種の宝物を贈られ,竜宮に伴われて歓待を受け,鎧・太刀赤銅釣鐘を与えられ,秀郷はこの祇園精舎無常院の鐘を鋳移したという名鐘を三井寺に寄進し,寺では盛大な供養を行う(上巻)。下野にいた秀郷は,同国相馬の平将門(まさかど)を討つべき旨を上京して奏聞し,平貞盛も討手に加わり追討に赴くが,五体ことごとく金(かね)の将門を討つことはできない。秀郷は方便をめぐらし,いったん将門に奉公し,契りを交わした小宰相の局から影武者の秘密を教えられ,また耳の根だけが肉身(にくじん)であると知らされ,みごと将門を討つことができた(下巻)。上巻に〈田原〉を〈俵〉と改めたいわれと,巻末に三井寺草創の縁起を詳しく記す。《平治物語》の将門譚を含まぬ素朴な筋立ての古絵巻も存し,南北朝期をさかのぼる製作かともいわれ,《太平記成立との相関性などの問題を含む。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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