赤銅(読み)シャクドウ

デジタル大辞泉 「赤銅」の意味・読み・例文・類語

しゃく‐どう【赤銅】

銅に金3~4パーセント、銀約1パーセントを加えた銅合金硫酸銅酢酸銅などの水溶液中で煮沸すると、紫がかった黒色の美しい色彩を示すので、日本では古くから紫金むらさきがね烏金うきんなどとよばれ重用された。
[類語]あかがね青銅唐金からかねブロンズ真鍮黄銅

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精選版 日本国語大辞典 「赤銅」の意味・読み・例文・類語

しゃく‐どう【赤銅】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 金を三~六パーセント含む銅合金。これに銀を一パーセント程度加えたものにもいう。日本では古くから工芸品、銅像などに用いられた。硫酸銅、酢酸銅溶液などで処理をすると青黒い色彩を出す。紫金烏金(うきん)
    1. [初出の実例]「塔分赤銅壱具 長一尺五寸」(出典:法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747)二月一一日)
    2. 「此の辺の塔の九輪は太略赤銅(シャクドウ)にてあると覚る」(出典太平記(14C後)二六)
    3. [その他の文献]〔山海経‐西山経〕
  3. しゃくどういろ(赤銅色)」の略。
    1. [初出の実例]「脂を落した赤銅の肉は、新らしき水気を含んで」(出典:良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉後)

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改訂新版 世界大百科事典 「赤銅」の意味・わかりやすい解説

赤銅 (しゃくどう)

〈烏金〉と書いて〈しゃくどう〉また〈うきん〉と読み,また紫金(しきん)ともいう。銅に6~7%の純金とわずかな白目(しろめ)(アンチモンを主としヒ素を含んだ金属)を加えた合金。金の多少によって上中下があり,上は銅10匁に6~7分,中は3~4分,下は1分で,下は〈めざしかね〉という。緑青(ろくしよう),明礬(みようばん),胆礬(硫酸銅)で処理すると,紫色を帯び,烏(からす)の羽のようなつややかな黒色を呈するので烏金と書く。またこの色を赤銅色という。室町時代以後使用されるようになり,特に装剣小道具(装剣金具刀装)のなかに多く用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤銅」の意味・わかりやすい解説

赤銅
しゃくどう

金3~4%、銀少量を含む銅合金で、わが国で古くから美術工芸品の製作用に用いられた。その組成一例は、金3.5%、銀1.5%、銅95%など。この合金を化学処理すると、金は美しい紫色の被膜をつくる。処理液は酢酸溶液に緑青(ろくしょう)(塩基性炭酸銅)、胆礬(たんぱん)(硫酸銅)などを溶かしたもので、赤銅製品を液中で煮沸すると、含有する金の量により、青色から黒色に至る美しい外観を呈する。

[阿座上竹四]

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百科事典マイペディア 「赤銅」の意味・わかりやすい解説

赤銅【しゃくどう】

銅に金6〜7%と微量の白目(しろめ)と呼ばれるアンチモン合金を加えた,日本古来の美術用合金の一つ。緑青(ろくしょう)・ミョウバン・胆バン(硫酸銅)の混合水溶液で処理すると,紫色を帯びた美しい黒色に着色するので,紫金(しきん)・烏金(うきん)とも呼ぶ。美術工芸品・装飾品などに古くから使用される。

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化学辞典 第2版 「赤銅」の解説

赤銅
シャクドウ
red brass

80~90質量% Cuと,Znの組成をもつ合金である.この合金は軟らかく耐食性もよいため,建築金具,ソケット,ファスナーなどに利用されている.[別用語参照]黄銅

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世界大百科事典(旧版)内の赤銅の言及

【金属工芸】より

…黄色を呈しているところから黄銅とも呼ばれて珍重され,やがて日本でも作られるようになった。このほか,日本独特の色金(いろがね)として,黒紫色を呈する赤銅(しやくどう)(銅にわずかに金を加えたもの),紫色を呈する紫金銅(しきんどう)(赤銅より多めに金を加えたもの),黒味銅(くろみどう)(銅に白目(しろめ)を加えたもの),銀灰色を呈する朧銀(ろうぎん)(銅3に対し銀1で四分一(しぶいち)ともいい,少量の金を加える場合もある),青金(あおきん)(金に銀を加えたもの)などがある。銅および銅合金は緑青(ろくしよう)と呼ばれる青緑銹が生ずるので,防銹と美観をかねて表面に金鍍金(ときん)を施し,金銅(こんどう)製品とすることが多い。…

※「赤銅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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