人形浄瑠璃。時代物。5段。浅田一鳥,浪岡鯨児,並木素柳らの合作。1752年(宝暦2)12月大坂豊竹座初演。53年正月京の山下又太郎座(南の芝居)で歌舞伎化。四段目の切が最も有名である。浄瑠璃《行平磯馴松(ゆきひらそなれのまつ)》(1738年正月大坂竹本座。文耕堂,竹田正蔵,三好松洛作)の書替えで,松風村雨物の一つ。能の《松風》の在原行平と松風・村雨姉妹の恋に惟喬・惟仁親王の御位争いの後日譚を加えた脚色。宝剣紛失のかどで須磨に流された行平は許されて帰京するが,松風を思って恋患いとなる。奥方の命で奴(やつこ)蘭平が松風と瓜二つの女おりくとその兄と称する与茂作を連れて帰ってくる。折から反逆者伴義雄の捕縛に蘭平の子繁蔵がつかわされる。蘭平が伜を案じて主君行平のことばも上の空なので,怒った行平が刀を抜くと,蘭平はたちまちに失神し,我にかえると正体をなくして狂乱する。通称を《蘭平物狂(らんぺいものぐるい)》というように,これが一つの見せ場であるが,筋の上では蘭平こそ伴義雄で,陰謀のための偽狂乱である。与茂作実は行平の臣の計略で素姓を見破られた蘭平は,大勢の捕手を相手にたたかうが,現行演出では,この立回りが眼目で,数多い歌舞伎のタテの中でも最もスケールの大きい,手のこんだものとして有名。蘭平が,はしご,井戸の釣瓶,石灯籠などを使ってさまざまなテクニックを見せるタテは,《千本桜》の竹藪の小金吾,《双級巴(ふたつどもえ)》藤の森の石川五右衛門とともに,大立回りの三大代表作とされる。この立回りののち,蘭平がわが子繁蔵の縛につくというのが結末。
執筆者:落合 清彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
浄瑠璃義太夫(じょうるりぎだゆう)節。時代物。五段。浅田一鳥(いっちょう)、浪岡鯨児(げいじ)、並木素柳らの合作。1752年(宝暦2)12月、大坂・豊竹(とよたけ)座初演。在原行平(ありわらのゆきひら)と松風・村雨姉妹の恋物語に、惟喬(これたか)・惟仁(これひと)両親王の御位(みくらい)争いの事件をあわせて脚色。四段目「行平館」「同奥庭」だけが歌舞伎(かぶき)で伝わり、「蘭平物狂(らんぺいものぐるい)」の通称で知られる。謀反(むほん)人伴義兼(ばんよしかね)の子義雄(よしお)が行平の館へ奴(やっこ)蘭平に身をやつして入り込み、刀の光を見ると狂気する奇病を装って在原の系図を盗むが、見破られて大ぜいの捕手と闘ったすえ、行平の命を受けた一子繁蔵(しげぞう)の縄にかかるまで。眼目は「行平館」での蘭平の偽物狂い、「奥庭」の変化に富んだ大立回りで、とくに後者は歌舞伎のタテの代表的なものとなっている。
[松井俊諭]
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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