平安前期の歌人。阿保(あぼ)親王の子、業平(なりひら)の兄。826年(天長3)兄弟の仲平、業平らと在原姓を賜る。参議、中納言(ちゅうなごん)、正三位(しょうさんみ)と進んだが、887年(仁和3)致仕、寛平(かんぴょう)5年7月19日没。881年(元慶5)藤原氏の勧学院に倣い一門の子弟教育のため奨学院を設立した。和歌に通じ、民部卿(みんぶのきょう)を兼ねた884年以後3年の間に「在民部卿家歌合」を自邸で主催したらしい。勅撰(ちょくせん)集入集歌11首がある。『古今集』の詞書(ことばがき)に事件に関係して須磨(すま)にこもったと記すが、事実不明。『源氏物語』須磨巻は行平歌を基底とし、謡曲『松風』などに伝説主人公化される。
わくらばにとふ人あらば須磨の浦に藻塩たれつつわぶと答へよ
[藤岡忠美]
平安初期の歌人。平城天皇の皇子阿保親王の第2子。在原業平の同母兄。826年在原朝臣の姓を賜る。884年正三位。民部卿を兼ねる。《古今集》《後撰集》に各4首入集。貴族の子弟の学校奨学院の創設者。885年に彼の邸宅で催された《在民部卿家歌合》は現存最古の歌合である。《古今集》巻十八には〈事にあたりて〉須磨に蟄居した時の作〈わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に藻塩たれつつわぶと答へよ〉があり,《源氏物語》の〈須磨〉の巻はこれに拠ったとも言われる。また,この歌にちなむ謡曲《松風》は須磨を舞台として,行平ゆかりの松を配し,生前の彼に愛されたという海女松風・村雨の霊が登場する作品である。《古今集》巻八に〈立別れ因幡の山の峯に生ふる松とし聞かば今帰りこむ〉があり,百人一首にも採られている。
執筆者:奥村 恒哉
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(俵木浩太郎)
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…大田南畝の《一話一言》によると,天明(1781‐89)末ころから作られるようになり,それまで一人前のなべ物には鋳物の小型のなべが使われていたが,その鉄なべにとってかわって普及したという。行平の語源については,在原行平(ありわらのゆきひら)が須磨で海女に塩を焼かせた故事にちなむとも,煮たものの湯げのぐあいを〈湯気平(ゆげひら)〉と表現し,それを行平にしたなどとする説がある。【鈴木 晋一】。…
※「在原行平」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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