健康管理(読み)けんこうかんり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「健康管理」の意味・わかりやすい解説

健康管理
けんこうかんり

各人それぞれが自らの身体と精神とを健康状態にあるよう積極的に努力することをいう。人間の体が恒常性を保つためには各臓器・組織が調和をとりつつ機能を全うすることがたいせつである。そのためには、十分な栄養分や水分などをバランスよく外から補給し、効率よく利用できるようにしなければならない。効率を高めるためには、休養や睡眠を確保し、適度な運動やレクリエーションなどによる刺激を与えることが必要となる。とくに運動やレクリエーションは精神面の健康にも大きな役割を担っている。これらを各人にあったやり方で、かつ他人との調和を損なうことなく実施することは、社会にうまく適応することであり、社会生活を健康に過ごすための方法である。

 こうした諸条件を自分自身で整えることができない乳幼児未成年に対しては両親などの保護者が、また、身体に障害のある者や老人などに対しては社会福祉の観点からの保護者が、それぞれに応じた条件を整えることも、健康管理の一面ということができる。

 日本の場合、幼稚園保育園や学校、会社などにおいては、その施設の管理者が、また地域社会にあっては各地方自治体が健康診断という形式で医学的な検査を行い、疾病異常の発見に努めることが義務づけられている(学校保健安全法や労働基準法など)。しかしながら、健康は最終的には各個人の意識を高めて個人の責任において保たれるものであり、学校における教育のみならず、生涯を通じての健康教育が重要とされる。最近では、健康を害してから医療に頼ることよりも、健康を害さないようにするために食物摂取運動処方といった方面の研究やその実生活への応用が重要視されるようになり、各地の健康増進センターや保健所、教育委員会が中心になって、積極的に健康維持や増進に取り組むところが多くなっている。物資が豊富になった現代社会においては、貧困による栄養障害などは減少したものの、食品摂取の偏りやとり過ぎ、精神的ストレスなどによって、精神面や社会的適応の問題が表面化している。このため、自分の意志で自分の行動をコントロールする力を養うことも、健康管理のうえからは、ますますたいせつなこととなっている。

小野三嗣

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「健康管理」の意味・わかりやすい解説

健康管理 (けんこうかんり)
health administration

人々の健康を守り育てること。従来,健康教育,健康相談などの予防医学活動を中心にし,これに環境管理,治療医学,リハビリテーション,ポジティブ・ヘルス・ケア(積極的健康管理)などの諸活動を包括したものが狭義の健康管理とよばれてきた。しかし,近年の社会(および非社会)集団の拡大と健康管理の活動内容の整備,充実に伴い,健康管理の内容も拡大し,保健サービスhealth serviceという言葉もよく使われる。これらの活動の目的は,グローバルなレベルで人々の〈健康〉を守り育てることにある。活動対象は,コミュニティ(広義)内部の種々のアソシエーション(国,事業所,官公庁,学校,地域,家庭など)と特定の人間集団(婦人,老人,青少年,心身障害者など)のすべてに向けられる。また活動内容には,上記のヘルス・ケア(またはメディカルケア)の諸技法にとどまらず,インプット・アウトプット分析(保健,医療行為に投下された費用,人員,施設,時間などのすべてと,それによって得られる効果の関係を分析すること),モニタリングなど,活動効果の向上と効率化を目的とするマネジメント技法が含まれる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「健康管理」の意味・わかりやすい解説

健康管理
けんこうかんり

疾病を予防し,健康を保持,増進するという目的を達成するために行なわれる管理のこと。健康管理は個人の保健行動と,医師,歯科医師,保健師助産師看護師,栄養士,ケースワーカー薬剤師などの専門家の保健活動とによって達成される。健康管理は広義と狭義に用いられ,広義の健康管理は狭義の健康管理と疾病管理とが包含され,健康現象全般が対象になる。健康管理の場としては,地域,学校,職場などが主になるが,個人の生活全体をとらえるためには,個々の集団における健康管理だけでなく,それぞれが連携を保った一貫した体制が必要である。

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世界大百科事典(旧版)内の健康管理の言及

【労働安全衛生】より

…労働者の就業にかかわる建設物,設備,原材料,ガス,蒸気,粉塵(ふんじん)などにより,または作業行動その他業務に起因して労働者が負傷し疾病にかかり,または死亡することを労働災害というが,それを未然に防止することはもちろん,さらに労働者が快適に作業できるよう作業条件・環境を適正に整備し併せて健康管理を行い労働者の安全と健康の確保を目的とする諸施策や活動をいう。その内容・基準については,労働基準法や労働安全衛生法(後述)を中心とする関係法規が定めているが,各事業場ではそれを遵守することはもちろん,さらに安全衛生水準向上のためきめ細かな対策が必要となる。…

※「健康管理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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