ソーシャル・ケースワーカーsocial caseworkerの略称。社会生活上の問題をみずから解決することが困難なために,専門的なサービスを必要としている個人または家族に対して,個別的な援助を与える専門技術がソーシャル・ケースワークsocial caseworkであり,それを行う専門家がケースワーカーである。ケースワークは,第1次大戦後のアメリカにおいて,M.E.リッチモンドによって体系化され,日本には大正末期に紹介された。第2次大戦後の日本ではリッチモンドの社会学的な診断主義ケースワークに加えて,心理学的・精神医学的な機能主義ケースワークが導入され,ケースワークのあり方をめぐる議論が活発化し社会科学の立場からのケースワーク批判もなされている。
ケースワーカーの活動分野は被助者=クライエントclientのかかえる問題の質によって異なり,その所属も多岐の公私機関にわたっているが,それらはケースワーカーがそこで占める位置によって次の3種に大別できる。(1)ケースワーカーが主要構成員としての責任を負う,福祉事務所,家庭相談機関,社会福祉施設など,いわゆる社会福祉六法(社会福祉事業法,児童福祉法,母子福祉法(1981年〈母子および寡婦福祉法〉に改称),精神薄弱者福祉法,身体障害者福祉法,老人福祉法)にかかわる実施機関,(2)ケースワーカーが他の専門職種に対して協働的な役割を担う,病院,診療所,リハビリテーション施設,保健所などの医療・保健機関および家庭裁判所,保護観察所などの司法・更生機関,(3)学校,企業など,ケースワーカーの新たな活動分野と考えられている機関。活動分野がいずれであるにせよ,ケースワーカーがクライエントとの間に,問題解決の援助という目的に向けて,意識的に統制された専門的関係を成立させるためには,ケースワーカーとして,問題の個別性の重視,クライエントに対する受容,クライエントによる自己決定,秘密の保持など,ケースワークの基本原則を守る専門的態度が要求される。ケースワークの専門的知識・技術が生かされるためには,十分な資質をもつケースワーカーを養成・研修する体制の確立とケースワーカーの職務上の環境条件の整備が必要であるが,専門職性という観点から日本のケースワーカーの実情をみると,資格制度のあいまいさ,職場における組織的な管理,協働,教育の不十分,人材配置やケース分担量の不適正など,ケースワークの領域の多様化と専門分化のなかで,いまだ多くの課題が残されている。
執筆者:庄司 洋子
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